英語の音いろ

映画、TVドラマ、洋書などの英語を、文法や構文そしてニュアンスの視点から解説します。

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オスカー・ワイルドの小説『ドリアン・グレイの肖像』から。


The Picture of Dorian Gray (Penguin Classics)
Wilde, Oscar
Penguin Classics
2003-02-01



以下は、貴族の青年であるドリアン・グレイが、退廃的な考えに染まりながらも、社交界においては貴族としての振る舞いを保っていた様子を描く文章の一部です。he はドリアンを指しています。




Once or twice every month during the winter, [...], he would throw open to the world his beautiful house and have the most celebrated musicians of the day to charm his guests with the wonders of their art.  

Oscar Wilde, The Picture of Dorian Gray, p. 125


<解説>







Once or twice every month during the winter, [...], he would throw open to the world his beautiful house and have the most celebrated musicians of the day to charm his guests with the wonders of their art.

would は「過去の習慣」を表す用法です。

throw open to the world his beautiful house においては、open to the world がC、his beautiful house がO。これは、throw O C(OをCの状態にする)のOとCを入れ替えたものです。

「冬には月に1、2回、彼は自分の美しい家を皆に開放し、当代随一の音楽家を招き、彼らの演奏の素晴らしさでゲストを酔わせるのだった」


007シリーズ『ダイ・アナザー・デイ』(2002年)から。予告編はこちら


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ロザムンド・パイク
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
2019-06-19



ボンドは北朝鮮に捕らえられ長く監禁されていましたが、米英の情報部は捕虜交換によってボンドを北朝鮮から取り戻します。北朝鮮による監禁中の場面では、ボンドが暴行を受けるだけでなく、生きたサソリを顔に近づけられたりする様子も写っています。

イギリスに帰国後、ボンドは全身の精密検査を受け、その結果、医師グループはボンドの体内にサソリの毒と、その毒を中和する解毒剤が存在していることを発見します

以下は、このことを最初に発見した医師が、同席している別の医師にサソリの毒と解毒剤の存在を伝えた後に、その医師に対して言うセリフです。antidote は「解毒剤」。




They'd sting him, then administer the antidote.

Die Another Day  (00:21:07)


<解説>







They'd sting him, then administer the antidote.

They はボンドに暴行を加えた人間のことを指しています。誰のことを言っているのかが状況から分かるときには、具体的な名詞を事前に出すことなく、いきなり they を使うことができます。

They'd は They would の短縮形。この would は「過去の習慣」の用法で、過去において習慣的に繰り返されたことを表します。

「彼らはボンドにサソリの針を刺し、その後に解毒剤を処方するということを繰り返したのだ」



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ボンドは北朝鮮に捕らえられ監禁されていましたが、米英の情報部は、ボンドが拷問を受けて機密を漏らしていると考え、捕虜交換によってボンドを北朝鮮から取り戻す手配をします。下のセリフは、北朝鮮と韓国の国境にある橋で捕虜交換が行われ、多くの米英の関係者が見守る中、ボンドが橋を渡って韓国側へとゆっくりと近づいてくる場面のものです。

以下は、大勢に見守られながら近づいてくるボンドを見たアメリカ国家安全保障局のチーフであるファルコが、イギリス側の人間に対して言うセリフです。ファルコは、ボンドが機密を漏らしたせいで、アメリカの情報員が殺されたと考えていて、ボンドのことをよく思っていません。




Look at him. You'd think he was some kind of a hero.

Die Another Day  (00:20:23)


<解説>







Look at him. You'd think he was some kind of a hero.

You は「あなた」ではなく、人一般を指す用法。「あの様子を見たら」あるいは「あの様子を見た人なら」という仮定を受けて、助動詞の過去形である would が使われています。he was と過去形になっているのは、最初に過去形の would が使われていることによる時制の一致で、過去のことを表しているわけではありません。

「some + 可算名詞の単数形」の場合の some は「何らかの」という意味です。

「奴を見てみろ。(事情を知らない人があの様子を見たら)奴のことを何かの英雄かと勘違いしそうだな」


こちらの記事で、ハリーポッターにおける似たような would の使い方を取り上げています。


次の you'd think も同様の使い方です。

I ignore him every time I see him, so you’d think he’d get the message and leave me alone.
(Cambridge Dictionary)

「彼に会うたびに私は彼を無視している。(そう聞いたら普通は)彼は空気を読んで私に構わないようにしてくれると思うでしょ?(でもそうじゃない)」

get the message は「言いたいことを察する」という意味の熟語です。



オスカー・ワイルドの小説『ドリアン・グレイの肖像』から。


The Picture of Dorian Gray (Penguin Classics)
Wilde, Oscar
Penguin Classics
2003-02-01



以下は、登場人物の1人が、自分が行かなかった昼食会で何が起こったかを推量する一節です。その昼食会は貴族の集まりです。thrift は「質素倹約」、the idle は「有閑階級の人々」。




The rich would have spoken on the value of thrift, and the idle grown eloquent over the dignity of labour.  

Oscar Wilde, The Picture of Dorian Gray, p. 16


解説>







The rich would have spoken on the value of thrift, 

「would have + 過去分詞」(~しただろう)は、「もし仮にあの時~だったら」という仮定を受けて、架空の過去を推量するのに使われる用法を高校で習いますが、実際には「架空の過去」だけでなく、「実際に過去に起きたであろうこと」を推量するのにも使われます。

「金持ちは質素倹約の大切さについて話しただろう」


The rich would have spoken on the value of thrift, and the idle grown eloquent over the dignity of labour.

the idle と grown の間には、次のように would have が省略されています。

The rich would have spoken on the value of thrift, and the idle (would have) grown eloquent over the dignity of labour.

A and B で、上の例のように A と B に同じ構造を持つ文が入るとき、くどくなるのを避けるために、共通する部分を B から取り除くことがよくあります。このような省略は、「共通関係の省略」と呼ばれたりします。

「grow + 形容詞」は第2文型(VC)で「~な状態になる」という意味です。over ~ はここでは「~について」。

金持ちは質素倹約の大切さについて話しただろうし、(働かなくても生きていける)有閑階級の人間は、労働というものが持つ尊厳について雄弁に語りだしただろう」



今回は英英辞典の例文から。



(普通に単語を調べるだけであればオンラインで無料で使えます)


通常、「A and B」という形では、AとBには「動詞と動詞」「名詞と名詞」「文と文」など対等のものが入りますが、例外もあります。

① 



Only a year ago and this would have seemed impossible.  

(Oxford Advanced Learner's Dictionary)


② 


One look at his face and Jenny stopped laughing.

(Oxford Advanced Learner's Dictionary)


解説>









Only a year ago and this would have seemed impossible.

この文においては、Only a year ago and はこれだけで「わずか1年前であったとしても」という意味を表します。そして、この仮定を受けて would が使われています。

「たった1年前であったとしても、このようなことは不可能だと思われただろう」
(この1年で急速に技術が進んだ/事態が進展した、など)

Only a year ago and だけで、仮定法大過去を含む if 節(if S had + 過去分詞)と同等の働きをしていると言えます。仮定法を含む if 節や、それと同等の仮定を受けると、主節には助動詞の過去形が使われます。




One look at his face and Jenny stopped laughing.

One look at his face and だけで、「彼の顔を一目見るなり」という意味を表します。

彼の顔を一目見るなり、ジェニーは笑うのをやめた

One look at ~ and も割とよくある表現です。

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