イギリスの文学批評家、文化理論家テリー・イーグルトンによる On Evil(2010年)から。
以下は、子供が evil であり得るかを議論する文章の一部です。evil は「邪悪さ」という意味ですが、著者はキリスト教の文脈における evil を考察しているので、下の解説では evil は日本語に訳さずにそのままにしています。
enter into purchase agreements は「購買契約を結ぶ」。
Most of us, [...], recognise that small children can no more be evil than get divorced or enter into purchase agreements.
Terry Eagleton, On Evil, p. 5
<解説>
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Most of us, [...], recognise that small children can no more be evil than get divorced or enter into purchase agreements.
that節の内部では、
① Small children can be evil.
② Small children can get divorced or enter into purchase agreements.
という2つの文が比較されています。no more の no は、more の度合いがゼロであることを示します。従って、「Small children can be evil.」が成り立つ度合いと「Small children can get divorced or enter into purchase agreements.」が成り立つ度合いが同じであることになります。後者はあり得ないので前者もあり得ない、というのが that節の主張です。
「小さな子供が離婚したり購買契約を結んだりできる度合いと全く同じ程度にしか、小さな子供は evil であることができない、と我々のほとんどは認識している」
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「小さな子供が離婚したり購買契約を結んだりできないのと同様に、小さな子供は evil ではあり得ない、と我々のほとんどは認識している」