英語の音いろ

映画、TVドラマ、洋書などの英語を、文法や構文そしてニュアンスの視点から解説します。

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イギリスの文学批評家、文化理論家テリー・イーグルトンによる Reason, Faith, and Revolution(2009年)から。





以下は、クリスチャンにとってキリストの復活とはどのようなものなのかを述べる文章の一部です。resurrection は「キリストの復活」、lurk は「ひそむ」、arm O with ~ で「Oに~という装備を与える」



The resurrection for Christians is not a metaphor. It is real enough, but not in the sense that you could have taken a photograph of it had you been lurking around Jesus's tomb armed with a Kodak.

Terry Eagleton, Reason, Faith, and Revolution, p. 119



<解説>







The resurrection for Christians is not a metaphor. It is real enough,

「クリスチャンにとってキリストの復活とは比喩的なものではない。それは真実といってよいものである」


but not in the sense that you could have taken a photograph of it had you been lurking around Jesus's tomb armed with a Kodak.

in the sense that S V で「SVという意味で」。

had you been ~ →「if S had + 過去分詞」(仮にSが~していたなら)と同等の意味を「had S + 過去分詞」で表すことができます。「had S + 過去分詞」の方がフォーマルな言い方。

armed with ~ は、arm O with ~(Oに~という装備を与える)の過去分詞を使った分詞構文です。

本来固有名詞であるはずの Kodak に不定冠詞の a がついているのは、ここでは Kodak が「コダック製のカメラ」という意味で一般名詞として使われているためです。

「しかし真実といっても、コダックのカメラを持ってキリストの墓の近くに潜んでいたらキリストの復活の写真を撮ることができたはずだという意味でのことではない」


前回紹介した、フランスに住むイギリス人の著者がフランスの文化を描いた本から。

A Certain Je Ne Sais Quoi
Charles Timoney
Particular Books
2009-09-22



タイトルの je ne sais quoi(英語に直すと I don't know what)はフランス語由来の英熟語で、「言葉では表現しがたい魅力」を表します。certain はここでは「ある種の」。je ne sais quoi は不可算名詞ですが、不定冠詞の a がつけられています。

seriousness(真剣さ)や sadness(悲しみ)といった抽象的な意味を持つ不可算名詞でも、「どんな真剣さなのか」あるいは「どんな悲しみなのか」など、特定の「種類」や「タイプ」を意識しているときには、次のように a がつけられることがあります。

He spoke with a seriousness that was unusual in him.
(Oxford Advanced Learner's Dictionary)

(彼は、普段の彼には見られない真剣さで話をした)

本のタイトルの A Certain Je Ne Sais Quoi(言葉では表現しがたいある種の魅力)に a がつけられているのも同じ理由で、certain(ある種の)がついているためです。


ちなみにこの本の副題は

The Ideal Guide to Sounding, Acting and Shrugging Like the French

フランス人のように話したり振舞ったり肩をすくめたりするための完全ガイド

となっていて、実際に本文にはフランス人独特の肩のすくめ方についての記述があります。以下はその一部です。




Were shrugging an Olympic sport, the French would be sure of winning the gold medal every four years. The French shrug often, and they shrug splendidly.  

Charles Timoney, A Certain Je Ne Sais Quoi, p.59



解説>







Were shrugging an Olympic sport, the French would be sure of winning the gold medal every four years.

「were S ~」で「if S were ~」と同等の内容を表すことができます。「were S ~」の方が硬い表現。

「もし肩をすくめることがオリンピックの競技だったら、毎回金メダルを獲得できるとフランス人は確信していることでしょう」


The French shrug often, and they shrug splendidly.

「彼らは頻繁に肩をすくめ、しかも見事なやり方でそうするのです」



ミスター・ビーンで知られるローワン・アトキンソン主演のコメディ映画『ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬』から。


ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬 [Blu-ray]
ローワン・アトキンソン
ジェネオン・ユニバーサル
2012-12-05



以下は、イギリス人スパイである主人公のジョニーイングリッシュと、彼の部下であるタッカーとの会話です。場所は飛行機の機内。アジア系の男性アテンダントが「Susan」というネームタグを胸につけているのを不審に思ったタッカーが、上司のイングリッシュに注意を促す場面です。




Tucker:  I don't think he's a "Susan." 

English: But then you're not a linguist,
              are you, Tucker?

Johnny English Reborn, (00:09:07)



解説>







Tucker: I don't think he's a "Susan."

通常、固有名詞には a をつけませんが、この Susan は固有名詞ではなく、「Susan という名前の人」という意味で普通の名詞として使われているため、a がつけられています。

「彼が Susan(スーザン)という(女性の)名前なのはおかしいのでは?」


English: But then you're not a linguist, are you, Tucker?

この But then は前回の記事で紹介した熟語で「でも」という意味です。

「でも君は外国語に詳しいわけではないだろ?」


イングリッシュはこの後続けて
「Susan はスーザンではなく、シュジャンという中国の名前なのだ」
と説明します。

ちなみに、linguist はここでは「言語学者」ではなく、「外国語に通じている人」という意味です。


『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』(2015年)から。予告編はこちら







以下は、冒頭のシーンでの、主人公 Ethan の仲間であるBenji とBrandt の会話です。Benji はベラルーシのミンスクの空港の滑走路わきの草むらに隠れながら離陸準備中の軍用機を見張っています。Brandt は苛立った様子でアメリカの指令室から、Benji と無線でやり取りをしています。



Brandt: The package is on the plane.

Benji: Yeah, I know. We're currently formulating a plan B, although, technically, it's a plan C.

Mission Impossible: Rogue Nation  (00:01:25)


<解説>







Brandt: The package is on the plane.

ここで言うpackage とは「問題のもの」つまり「ブツ」という意味です。

「ブツはすでに飛行機に積み込まれてしまっている」


Benji: Yeah, I know. We're currently formulating a plan B, although, technically, it's a plan C.

We're ~ は、直訳すれば「我々は今、Plan B を練っているところだ」ということですが、これは別に「Plan B」という特定の作戦があるわけではありません。「Plan B」が特定の作戦ではないことは、前につけられている不定冠詞「a」が示しています。

plan B は単語として辞書にも載っていて、Oxford Advanced Learner's Dictionary では、

"the thing or things somebody intends to do if their first plan is not successful"
(最初の作戦が失敗したときにやろうとすること)


という定義になっています。plan B とは「最初の作戦が失敗したときの代替の作戦」という意味。plan C は辞書に載っている単語ではありませんが、ここでは「代替の作戦である plan B も失敗したときの、さらに代わりの作戦」という意味で使われています。


We're currently formulating a plan B, although, technically, it's a plan C.

「今、第2の作戦を練ってるところだ。正確に言うと(第2の作戦も上手くいかなかったので、今練っているのは)第3の作戦だけどね」




スイス在住のイギリス人の著者よる、スイスを紹介する本から。







以下は、リンゴ生産で知られるスイスのThurgau という州について書いた文章の一部です。canton は「州」、albeit ~ で「~ではあるけれども」。



Swiss people call [Thurgau] Mostindien, from Most in Swiss German meaning apple juice and the canton being shaped like India, albeit a slightly deformed, pre-independence India.  

Diccon Bewes, Swiss Watching: Inside the Land of Milk and Money, p. 223


解説>








Swiss people call [Thurgau] Mostindien, from Most in Swiss German meaning apple juice and the canton being shaped like India, albeit a slightly deformed, pre-independence India.

meaning と being は動名詞で、Most in Swiss German と the canton がそれぞれ動名詞の意味上の主語になっています。

「スイス人はThurgau州を Mostindien と呼びます。これは、スイスのドイツ語では Most が『リンゴジュース』を意味し、Thurgau州
がインドのような形をしていることによります。インドと言っても今とは少し違う、独立前のインドのような形ですが」


通常、固有名詞には不定冠詞の a を付けませんが、ここでは a slightly deformed, pre-independence India と a が付けられています。これは、a slightly deformed, pre-independence India が、インドという国が想像上あるいは現実に存在し得る、無数の形や状態の中の1つであるためです。インドという国の1つのバージョンと言ってもいいかもしれません。

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