英語の音いろ

映画、TVドラマ、洋書などの英語を、文法や構文そしてニュアンスの視点から解説します。

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オスカー・ワイルドの小説『ドリアン・グレイの肖像』から。


The Picture of Dorian Gray (Penguin Classics)
Wilde, Oscar
Penguin Classics
2003-02-01



以下は、貴族の青年ドリアンが退廃的な思想に染まりながらも、知性を捨ててしまったわけではないことを示す一節です。

arrest O で「Oを止める」、creed は「教義」、inn は「宿」、sojourn は「滞在」。



But he never fell into the error of arresting his intellectual development by any formal acceptance of creed or system, or of mistaking, for a house in which to live, an inn that is but suitable for the sojourn of a night.  

Oscar Wilde, The Picture of Dorian Gray, p. 128


<解説>







But he never fell into the error of arresting his intellectual development by any formal acceptance of creed or system, or of mistaking, for a house in which to live, an inn that is but suitable for the sojourn of a night.

全体の構造は、he never fell into the error of arresting ~ or of mistaking ~ .。or は、of arresting ~ と of mistaking ~ を結んでいます。

mistaking, for a house in which to live, an inn that is but suitable for the sojourn of a night においては、an inn that is ~ の部分が mistaking の目的語。これは mistake O for ~(Oを~と間違える)のOを後ろに置いたもので、VとOの間に副詞的な語句(M)が挿入されているVMOという形です。

that is but suitable の but は only の意味です。


「しかし彼は、教義や思想体系を本格的に受け入れることによって自身の知的成長を止めてしまうという過ちを犯すことは決してなかった。一夜の滞在にのみ適した宿を自分の住み家と間違えるような過ちは犯さなかったのである」


オスカー・ワイルドの小説『ドリアン・グレイの肖像』から。


The Picture of Dorian Gray (Penguin Classics)
Wilde, Oscar
Penguin Classics
2003-02-01



以下は、自分が主催するパーティーで、招待客の一人ひとりについて詳細な「解説」を加えずにはいられない Lady Brandon という婦人について、Lord Henry が友人に語る一節です。Lord Henry はこの小説の主要登場人物の1人で、そのシニカルな言動によって、主人公ドリアンが退廃的な生活を送るようになる大きなきっかけを作る人物です。

truculent は「怒りっぽい」、orders と ribbons は軍人が服につける勲章などのこと、audible は「聞こえる」、astonishing は「驚くべき」。



I remember her bringing me up to a truculent and red-faced old gentleman covered all over with orders and ribbons, and hissing into my ear, in a tragic whisper which must have been audible to everybody in the room, the most astonishing details.  

Oscar Wilde, The Picture of Dorian Gray, p. 11


<解説>







I remember her bringing me up to a truculent and red-faced old gentleman covered all over with orders and ribbons, and hissing into my ear, in a tragic whisper which must have been audible to everybody in the room, the most astonishing details.

bringing と hissing は動名詞で、bringing の前の her はこの2つの動名詞の意味上の主語。and は bringing ~ と hissing ~ をつないでいます。

bring O up to ~ で「Oを~のところに連れてくる」。

hiss はここでは他動詞です。hiss O で「O(=言葉など)を小さな、しかし激しい感じの声で言う」という意味で、the most astonishing details が hissing の目的語。hissing 以下は、VとOの間に副詞的な語句(M)が挿入されているVMOという形です。

「彼女が私を怒りっぽくて赤い顔をした、そこら中に勲章をつけた年配の紳士のところへ連れていって、部屋にいた全ての人に聞こえたに違いない悲劇的とでも言うべきささやき声で(その紳士についての)最も驚くべき赤裸々な事細かな事実を私に激しく耳打ちしたのを私は覚えている」


再び、Parker's Wine Bargains(邦題『ワインの帝王ロバート・パーカーが薦める世界のベスト・バリューワイン』)から。





以下は、
前回の文章のすぐ後に続く文で、引き続きロワール川流域のワインを説明しています。



From few if any other places on earth can one still harvest such affordable yet distinctively delicious wines; the stylistic range is so vast that it would bewilder if it did not bewitch us. 

Parker's Wine Bargains: The World's Best Wine Values Under $25, p. 197


解説>







From few if any other places on earth can one still harvest such affordable yet distinctively delicious wines; the stylistic range is so vast that it would bewilder if it did not bewitch us.

if は基本的には if S V の形で使われますが、ここは、

From few (if any) places

となっています。if any は「たとえあったとしても」という意味で few(ほとんど~ない)を修飾しており、few (if any) が places を修飾しています。few if any ~ はよく使われる表現なので、見たらすぐに、few (if any) ~ と読めるようにしておくとよいと思います。

英語では、否定の意味を持つ副詞が先頭に来ると、後ろは疑問文の語順に倒置される、という約束があります。

From few (if any) places も「ほとんど~ない」という否定の意味を持ち副詞的に働いているので、後ろが「can + S + 動詞の原形」という疑問文の形になっています。From few ~ は副詞句にしかなり得ないので、From few を見た時点で後ろが倒置されていることを予期し、can S を見つけます。


From few (if any) other places on earth, can one still harvest such affordable yet distinctively delicious wines

「ロワール川流域のように、安くてしかも特徴的な素晴らしい美味しさを持つワインをいまだに見つけられる地域は、世界中にほとんどないと言ってよいだろう」


後半部分

the stylistic range is so vast that it would bewilder if it did not bewitch us.

の if も上の場合と同様「たとえ~としても」の用法です。

the stylistic range is so vast that it would bewilder (if it did not bewitch) us.

「ロワールワインのスタイルは多種多様で、その種類の豊富さは、我々の思考能力を奪ってしまうというほどではないとしても、我々を十分に混乱させてしまうだろう」

bewilder はその意味から他動詞のはず、と考えて目的語Oを予期しながら if ~ の部分を読んでいき、bewitch と共通の目的語である us を見つけます。

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