英語の音いろ

映画、TVドラマ、洋書などの英語を、文法や構文そしてニュアンスの視点から解説します。

タグ:関係代名詞


イギリスの文学批評家、文化理論家テリー・イーグルトンによる After Theory(2003年)から。


After Theory (English Edition)
Eagleton, Terry
Penguin
2004-08-26



古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、「人間として存在する」ということは、たゆまぬ訓練によって初めて成し得るものだと考えたそうです。以下は、アリストテレスのこの考えについての著者の文章の一部です。

Aristotle はアリストテレス、Thomas Aquinas は13世紀イタリアの神学者トマス・アクィナス、Sigmund Freud は19世紀にオーストリアで精神分析を創設したフロイトです。mortician は「葬儀を行う業者」。



For Aristotle, being human was in a sense a technical affair, as was love for Thomas Aquinas, desire for Sigmund Freud, and as death is for a mortician.

Terry Eagleton, After Theory, p. 78



<解説>







For Aristotle, being human was in a sense a technical affair, as was love for Thomas Aquinas, desire for Sigmund Freud, and as death is for a mortician.

「アリストテレスにとって、人間として存在するということは、ある意味で技術的な事柄に属した。トマス・アクィナスにとって愛が、フロイトにとって欲望がそうであったように。そして葬儀を行う業者にとって死がそうであるように」


as was love for Thomas Aquinas, desire for Sigmund Freud,
and
as death is for a mortician

as は「ように」という意味ですが、in a sense a technical affair を先行詞とする関係代名詞のような役割を果たしていて、自身がまとめる節の内部では be動詞の補語(C)として働いています。

2つの as の役割は全く同じですが、

as death is for a mortician は CSV、

as was love for Thomas Aquinas, desire for Sigmund Freud は CVS

という語順になっています。as や than の後ろではこのような倒置がよく起こります。ちなみに、

He was showing off, as is the way with adolescent boys.
(
Oxford Advanced Learner's Dictionary)

「彼は自分を誇示していた。思春期の少年にありがちなように」

のような文では、as は主格の関係代名詞のように働いていて、

as is the way with adolescent boys は SVC

という語順になっています。


オスカー・ワイルドの小説『ドリアン・グレイの肖像』から。


The Picture of Dorian Gray (Penguin Classics)
Wilde, Oscar
Penguin Classics
2003-02-01



青年ドリアンは、新しく友人となった Lord Henry の影響を受けて純粋さを失っていきますが、Lord Henry から借りた小説を読んだことがきっかけで、さらに退廃的な生活を送るようになります。以下は、その小説についての1文です。

it はその小説を指しています。jewelled は「宝石を散りばめたような」、obscure は「ぼんやりとした」、argot は「隠語」、archaism は「古語」、school は「流派」、Symbolistes は「象徴主義の芸術家」。



The style in which it was written was that curious jewelled style, vivid and obscure at once, full of argot and archaisms, of technical expressions and of elaborate paraphrases, that characterizes the work of some of the finest artists of the French school of Symbolistes.  

Oscar Wilde, The Picture of Dorian Gray, p. 121


<解説>







The style in which it was written was that curious jewelled style, vivd and obscure at once, ful of argot and archaisms, of technical expressions and of elaborate paraphrases, that characterizes the work of some of the finest artists of the French school of Symbolistes.

that curious jewelled style の that は、curious jewelled style が後ろから関係代名詞の節などで修飾されることを示しています。関係代名詞が出てくることを予測しながら読み進めて that characterizes ~ を見つけます。

vivid and obscure at once と full of ~ はともに style を後ろから修飾しています。at once はここでは「同時に」。

「その本の文体は、フランス象徴主義の最も優れた芸術家の何人かの作品を特徴づける、宝石を散りばめたような興味深い文体で、鮮やかでありながら同時にぼんやりとし、隠語や古語、そして技術用語と凝った言い換えが多用されていた」


オスカー・ワイルドの小説『ドリアン・グレイの肖像』から。


The Picture of Dorian Gray (Penguin Classics)
Wilde, Oscar
Penguin Classics
2003-02-01



最初は穢れのない青年だったドリアンは、新しく出会って友人となった Lord Henry の影響をうけて退廃的な生活を送るようになります。以下は、退廃的な思想をドリアンに吹き込む Lord Henry の言葉です。temptation は「誘惑」、longing for ~ で「~を欲しがる気持ち」。



The only way to get rid of a temptation is to yield to it. Resist it, and your soul grows sick with longing for the things it has forbidden to itself, with desire for what its monstrous laws have made monstrous and unlawful.  

Oscar Wilde, The Picture of Dorian Gray, p. 21


<解説>







The only way to get rid of a temptation is to yield to it.

「誘惑を(自分の心から)取り除く唯一の方法は、それに屈することだ」


Resist it, and your soul grows sick with longing for the things it has forbidden to itself, with desire for what its monstrous laws have made monstrous and unlawful.

「命令文 + and S V」で「~してもみろ。そんなことをすればSはVしてしまう」。「grow + 形容詞」は第2文型(VC)で「~な状態になる」。

Resist it, and your soul grows sick で「もし抗おうとすれば、心は病んでしまう」。


with longing for the things it has forbidden to itself

it と itself は your soul を指しています。it has forbidden における現在完了は、「禁じた結果、今禁じられている」という「結果」の用法で、この後の have made も同様です。

「心が自身に対して禁じたものを欲する気持ちのせいで」


with desire for what its monstrous laws have made monstrous and unlawful

この部分は with longing for ~ の言い換え。its は your soul を指しています。unlawful は通常は「違法な」ですが、ここでは「無法な」「無秩序な」といった意味です。

「心が自身に課した化け物のような法が、まさにそのために無法な化け物に変えてしまったものへの欲望のせいで」

欲するものを無理に自分に禁じることで、自分が欲しがっているその対象物が肥大化して、自分の心を焼き尽くしてしまうことを述べています。monstrous な law(禁忌)のために対象物そのものが monstrous になるとする点、そして law と unlawful が対比されている点など、とてもオスカー・ワイルドらしい文です。


Resist it, and your soul grows sick with longing for the things it has forbidden to itself, with desire for what its monstrous laws have made monstrous and unlawful.

「もし抗おうとすれば、心は病んでしまう。心が自身に対して禁じたものを欲する気持ちのせいで。心が自身に課した化け物のような法が、まさにそのために無法な化け物に変えてしまった対象物への欲望のせいで」


オスカー・ワイルドの小説『ドリアン・グレイの肖像』から。


The Picture of Dorian Gray (Penguin Classics)
Wilde, Oscar
Penguin Classics
2003-02-01



以下は、前回の記事で紹介した文のすぐ後に続く文で、前回と同じく、貴族の青年であるドリアン・グレイが、退廃的な考えに染まりながらも、社交界においては貴族としての振る舞いを保っていた様子を描く文章の一部です。文頭の His はドリアンのこと、settling はここでは preparing とほぼ同じ、Lord Henry はドリアンの友人です。




His little dinners, in the settling of which Lord Henry always assisted him, were noted as much for the careful selection and placing of those invited, as for the exquisite taste shown in the decoration of the table, [...].  

Oscar Wilde, The Picture of Dorian Gray, p. 125


<解説>







His little dinners, in the settling of which Lord Henry always assisted him, were noted as much for the careful selection and placing of those invited, as for the exquisite taste shown in the decoration of the table, [...].

which は His little dinners を先行詞とする非制限用法の関係代名詞で、関係代名詞の節が始まるのは in から。in the settling of which Lord Henry always assisted him の部分全体が関係代名詞の節です。元になっているのは、

Lord Henry always assisted him in the settling of ~
(Lord Henry は~の準備において常に彼に手を貸した)

という文。the ~ing of ... で「...を~すること」。「~ing」と「...」の間には、VO の関係が隠れています。

be noted as much for A as for B で「Bのためと同じくらいAのために注目される」。

the careful selection and placing of those invited の careful は、selection と placing の両方を修飾しています。placing の ing は上と同じ 
the ~ing of ...(...を~すること)の使い方。place O の基本の意味は「Oを(ある場所に)置く」で、ここでは「テーブルでのOの席順を決める」という意味です。


His little dinners, in the settling of which Lord Henry always assisted him, were noted as much for the careful selection and placing of those invited, as for the exquisite taste shown in the decoration of the table, [...].

「彼が催すちょっとした晩餐会(その準備にあたっては Lord Henry が常に彼に手を貸した)は、テーブルの装飾に示されるこの上なく優れたセンスのためにも注目されていたが、それと同じくらい、細心の注意を払ってなされるゲストの選別と席順の決定によっても注目されていた」



仕事でフランスに住むことになったイギリス人の著者がフランスの文化をユーモア溢れる筆致で紹介する本 A Certain Je Ne Sais Quoi: The Ideal Guide to Sounding, Acting and Shrugging Like the Frenchフランス人のように話したり振舞ったり肩をすくめたりするための完全ガイド)から。


A Certain Je Ne Sais Quoi
Charles Timoney
Particular Books
2009-09-22



以下は、著者の以前の同僚でカマンベールチーズ(Camembert)が大好きだったフランス人 Gaby について著者が語る一節です。wedge は「くさび形のもの」、a knob of ~ で「少量の~」。




[...], Gaby always ate his Camembert by cutting it into wedges and adding a knob of butter, a practice that I copied and still follow to this day.  

Charles Timoney, A Certain Je Ne Sais Quoi, p.193


解説>







Gaby always ate his Camembert by cutting it into wedges and adding a knob of butter, a practice that I copied and still follow to this day.

V O into ~ は通常、大きく分けて「Oを~の中に入れる」または「Oを~に変える」のどちらかの意味になります。cut O into ~ は「Oを~に変える」のタイプの方で、「カットすることでOを~の形に変える」という意味です。

cut it into wedges で「カットすることでそれをくさびの形に変える」つまり「それをくさび形に切る」。

「Gaby はいつもカマンベールチーズをくさび形に切ってバターを少しのせて食べていました」


Gaby always ate his Camembert by cutting it into wedges and adding a knob of butter, a practice that I copied and still follow to this day.

a practice that I copied and still follow to this day は同格で、ate his Camembert by cutting it into wedges and adding a knob of butter の部分を受けています。同格は、名詞を名詞で言い換える用法が最も一般的ですが、文の一部を同格で受けることもできます。

関係代名詞の that は、自身の節の内部では、copied と follow の2つの動詞の目的語として働いています。元になっているのは、

I copied O and still follow O to this day.
私はOを真似し、今日にいたるまで未だにOに従っています)

という文です。to this day で「今日にいたるまで」。


「Gaby はいつもカマンベールチーズをくさび形に切ってバターを少しのせて食べていました。これは私が真似して今日にいたるまで続けている習慣です(私はそれを真似し、今でもそうしています)」


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