英語の音いろ

映画、TVドラマ、洋書などの英語を、文法や構文そしてニュアンスの視点から解説します。

タグ:第5文型(VOC)

*この記事は一番上に固定しています。

ハリーポッター第2作目『ハリー・ポッターと秘密の部屋』から。


ハリー・ポッターと秘密の部屋 [DVD]
エマ・ワトソン
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
2014-07-16



主人公 Harry の通う魔法学校では、昔「秘密の部屋」にいるモンスターを誰かが部屋から出してしまい、そのために生徒がモンスターに殺されてしまうという事件が起きています。そして今、モンスターを「秘密の部屋」から出してしまったのは、Harry の友人でもあり、魔法学校の森の番人でもある Hagrid ではないかという見方が広がっています。

以下は、その事件についての Harry のセリフ。聞き手はHarryの親友の Ron です。Harry はある理由から、「秘密の部屋」を見つけ出して、その中を調べなければならないと考えています。I can't believe it's him の it は「モンスターを『秘密の部屋』から出した犯人」、him とは Hagrid のことです。



I can't believe it's him, but if he did set the monster loose last time, he'll know how to get inside the Chamber of Secrets.

Harry Potter and the Chamber of Secrets  (01:37:22)



<解説>







I can't believe it's him, but if he did set the monster loose last time, he'll know how to get inside the Chamber of Secrets.

if 節の中に過去形が使われていますが仮定法ではなく、実際に過去の時制を表しています。did は強調の do の過去形。「もし彼が~したのが事実なら」

set O loose で「Oを loose にする」つまり「Oを解き放つ」。set O loose は make O C(OをCの状態にする)と同じ第5文型(VOC)です。

he'll know ~ の will は、未来を表す通常の will ではなく、「現在の事柄についての推量」を表す用法です。


I can't believe it's him, but if he did set the monster loose last time, he'll know how to get inside the Chamber of Secrets.

「犯人が Hagrid だとは信じられないけれど、
もし前の事件のときに彼がモンスターを解き放ったのが事実なら、彼は『秘密の部屋』への入り方を知っているはずだ」


映画『ミッション:インポッシブル フォールアウト』(2018年)から。





主人公イーサンはある場所に潜入するために、相棒と共にパラシュートと酸素ボンベをつけて飛行機から飛び降りることになりますが、飛び降りる寸前になっても相棒が酸素ボンベをきちんと使えていないことに気づきます。以下は、相棒の酸素ボンベを直しながらイーサンが言うセリフです。



Is your oxygen on? There is no atmosphere at this altitude. I don't need you blacking out on me.

Mission: Impossible - Fallout (00:22:06)


解説>







Is your oxygen on? There is no atmosphere at this altitude.

この on は、電気器具などのオンオフと同じ使い方です。

「酸素ボンベの酸素はオンになっているのか(ちゃんと供給が開始されているのか)? この高度では(呼吸に必要なだけの)空気がないんだ」


I don't need you blacking out on me.

not need O ~ing は第5文型(VOC)で「Oが~している状態を必要としていない」「Oに~してもらう必要はない」が基本の意味ですが、皮肉の意味で「Oに~してもらっては困る」「Oに~して欲しくない」という意味になることがよくあります。black out は「気を失う」という意味の句動詞。

この on は前置詞で、直訳は難しいのですが強いて日本語にすれば、on ~ で「~を困らせるような形で」「~にダメージを与える形で」などとなります。

「君に(空中で酸素不足で)気を失ってもらっては困る」


この用法の on は口語でよく使われますが、なぜか載っている辞書は多くないようです。

以下は
Cambridge Dictionary から。
https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/on

The phone suddenly went dead on me.
「(私にとって困ったことに)急に電話が不通になった」

Their car broke down on them on the way home.
(彼らにとって困ったことに)帰る途中で車が故障した


イギリスの文学批評家、文化理論家テリー・イーグルトンによる Reason, Faith, and Revolution(2009年)から。





以下は、「科学」というものについて著者が自分の考えを述べる一節です。この著者はポストモダニズムについては、その価値を認めながらも全体的には批判的な態度を取っている理論家です。article of faith は「強い信条/思想」、sceptic は「懐疑主義者」



Science, then, trades on certain articles of faith like any other form of knowledge. This much, at least, the postmodern skeptics of science have going for them [...].

Terry Eagleton, Reason, Faith, and Revolution, p. 131



<解説>







Science, then, trades on certain articles of faith like any other form of knowledge.

trade on ~ には「~につけ込む」という熟語としての使い方がありますが、ここでは文字通りの意味である「~に基づいて(ビジネスの)活動を行う」に近い意味で使われています。

「ということは、他のあらゆる形の知と同様、科学も(完全に中立的、客観的ではあり得ず)特定の思想に基づいているのである」


This much, at least, the postmodern skeptics of science have going for them [...]. 

This much は「この分量」。この much は名詞です。

この文においては、This much がO、the postmodern skeptics of science がS、have がV、going ~ がCで、全体は OSVC という語順の倒置文です。倒置を戻すと、

The postmodern skeptics of science have this much going for them.

skeptics of ~ で「~について懐疑的な人」。この文では、You have O going for you(Oがあなたにとって利点・後ろ盾である)という熟語が使われています。直訳すると、

「ポストモダンの考え方をする人によく見られる、科学に対して懐疑的な態度をとる人々は、これだけの後ろ盾は持っている」


Science, then, trades on certain articles of faith like any other form of knowledge. This much, at least, the postmodern skeptics of science have going for them [...].

「ということは、他のあらゆる形の知と同様、科学も(完全に中立的、客観的ではあり得ず)特定の思想に基づいているのである。
ポストモダンの考え方をする人によく見られる、科学に対して懐疑的な態度をとる人々も、少なくともこの点では正当だ


オスカー・ワイルドの小説『ドリアン・グレイの肖像』から。


The Picture of Dorian Gray (Penguin Classics)
Wilde, Oscar
Penguin Classics
2003-02-01



最初は穢れのない青年だったドリアンは、新しく出会って友人となった Lord Henry の影響をうけて退廃的な生活を送るようになります。以下は、退廃的な思想をドリアンに吹き込む Lord Henry の言葉です。temptation は「誘惑」、longing for ~ で「~を欲しがる気持ち」。



The only way to get rid of a temptation is to yield to it. Resist it, and your soul grows sick with longing for the things it has forbidden to itself, with desire for what its monstrous laws have made monstrous and unlawful.  

Oscar Wilde, The Picture of Dorian Gray, p. 21


<解説>







The only way to get rid of a temptation is to yield to it.

「誘惑を(自分の心から)取り除く唯一の方法は、それに屈することだ」


Resist it, and your soul grows sick with longing for the things it has forbidden to itself, with desire for what its monstrous laws have made monstrous and unlawful.

「命令文 + and S V」で「~してもみろ。そんなことをすればSはVしてしまう」。「grow + 形容詞」は第2文型(VC)で「~な状態になる」。

Resist it, and your soul grows sick で「もし抗おうとすれば、心は病んでしまう」。


with longing for the things it has forbidden to itself

it と itself は your soul を指しています。it has forbidden における現在完了は、「禁じた結果、今禁じられている」という「結果」の用法で、この後の have made も同様です。

「心が自身に対して禁じたものを欲する気持ちのせいで」


with desire for what its monstrous laws have made monstrous and unlawful

この部分は with longing for ~ の言い換え。its は your soul を指しています。unlawful は通常は「違法な」ですが、ここでは「無法な」「無秩序な」といった意味です。

「心が自身に課した化け物のような法が、まさにそのために無法な化け物に変えてしまったものへの欲望のせいで」

欲するものを無理に自分に禁じることで、自分が欲しがっているその対象物が肥大化して、自分の心を焼き尽くしてしまうことを述べています。monstrous な law(禁忌)のために対象物そのものが monstrous になるとする点、そして law と unlawful が対比されている点など、とてもオスカー・ワイルドらしい文です。


Resist it, and your soul grows sick with longing for the things it has forbidden to itself, with desire for what its monstrous laws have made monstrous and unlawful.

「もし抗おうとすれば、心は病んでしまう。心が自身に対して禁じたものを欲する気持ちのせいで。心が自身に課した化け物のような法が、まさにそのために無法な化け物に変えてしまった対象物への欲望のせいで」


オスカー・ワイルドの小説『ドリアン・グレイの肖像』から。


The Picture of Dorian Gray (Penguin Classics)
Wilde, Oscar
Penguin Classics
2003-02-01



以下は、貴族の青年であるドリアン・グレイが、退廃的な考えに染まりながらも、社交界においては貴族としての振る舞いを保っていた様子を描く文章の一部です。he はドリアンを指しています。




Once or twice every month during the winter, [...], he would throw open to the world his beautiful house and have the most celebrated musicians of the day to charm his guests with the wonders of their art.  

Oscar Wilde, The Picture of Dorian Gray, p. 125


<解説>







Once or twice every month during the winter, [...], he would throw open to the world his beautiful house and have the most celebrated musicians of the day to charm his guests with the wonders of their art.

would は「過去の習慣」を表す用法です。

throw open to the world his beautiful house においては、open to the world がC、his beautiful house がO。これは、throw O C(OをCの状態にする)のOとCを入れ替えたものです。

「冬には月に1、2回、彼は自分の美しい家を皆に開放し、当代随一の音楽家を招き、彼らの演奏の素晴らしさでゲストを酔わせるのだった」

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