英語の音いろ

映画、TVドラマ、洋書などの英語を、文法や構文そしてニュアンスの視点から解説します。

タグ:句動詞


映画『ミッション:インポッシブル フォールアウト』(2018年)から。





主人公イーサンはある場所に潜入するために、相棒と共にパラシュートと酸素ボンベをつけて飛行機から飛び降りることになりますが、飛び降りる寸前になっても相棒が酸素ボンベをきちんと使えていないことに気づきます。以下は、相棒の酸素ボンベを直しながらイーサンが言うセリフです。



Is your oxygen on? There is no atmosphere at this altitude. I don't need you blacking out on me.

Mission: Impossible - Fallout (00:22:06)


解説>







Is your oxygen on? There is no atmosphere at this altitude.

この on は、電気器具などのオンオフと同じ使い方です。

「酸素ボンベの酸素はオンになっているのか(ちゃんと供給が開始されているのか)? この高度では(呼吸に必要なだけの)空気がないんだ」


I don't need you blacking out on me.

not need O ~ing は第5文型(VOC)で「Oが~している状態を必要としていない」「Oに~してもらう必要はない」が基本の意味ですが、皮肉の意味で「Oに~してもらっては困る」「Oに~して欲しくない」という意味になることがよくあります。black out は「気を失う」という意味の句動詞。

この on は前置詞で、直訳は難しいのですが強いて日本語にすれば、on ~ で「~を困らせるような形で」「~にダメージを与える形で」などとなります。

「君に(空中で酸素不足で)気を失ってもらっては困る」


この用法の on は口語でよく使われますが、なぜか載っている辞書は多くないようです。

以下は
Cambridge Dictionary から。
https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/on

The phone suddenly went dead on me.
「(私にとって困ったことに)急に電話が不通になった」

Their car broke down on them on the way home.
(彼らにとって困ったことに)帰る途中で車が故障した


Parker's Wine Bargains(邦題『ワインの帝王ロバート・パーカーが薦める世界のベスト・バリューワイン』)(2009年)から。





以下は、オーストリアのワインに使われるブドウの品種を紹介する
文章の一部です。Pinot Noir と St. Laurent はそれぞれブドウの品種名、Blauer Spӓtbrugunder は Pinot Noir のオーストリアでの呼び名、variety は「種」、acreage は「面積」。



Pinot Noir (Blauer Spӓtbrugunder) and its offspring [...] Austrian variety St. Laurent make up in intrigue for what (at least as yet) they lack in sheer acreage.  

Parker's Wine Bargains: The World's Best Wine Values Under $25, p. 55


解説>







Pinot Noir (Blauer Spӓtbrugunder) and its offspring [...] Austrian variety St. Laurent make up in intrigue for what (at least as yet) they lack in sheer acreage. 

make up in intrigue for ~ は、make up for ~(~を補う)の中に in intrigue(興味深さにおいて)が挿入されたもの。in intrigue と in sheer acreage が対比されています。

「ピノ・ノワール(別名 Blauer Spӓtbrugunder)と、ピノ・ノワールから派生したオーストリアの品種である St. Laurent は、興味深さの点で、それらが絶対的な作付面積の点で(少なくとも今のところ)欠いているものを補っている」



「ピノ・ノワール(別名 Blauer Spӓtbrugunder)と、ピノ・ノワールから派生したオーストリアの品種である St. Laurent の興味深さは、この2品種の作付面積の(少なくとも現時点での)小ささを補って余りある」


以前にも紹介した Parker's Wine Bargains(邦題『ワインの帝王ロバート・パーカーが薦める世界のベスト・バリューワイン』)(2009年)から。





以下は、コルシカ島のワインを紹介する
文章の一部です。コルシカ産のワインには、その土地固有の品種など、様々な個性的な品種のブドウが使われているそうです。その主な品種の名前をひと通り挙げた後に以下の文が続きます。



It can safely be said that this cast of vine characters, together with the unique microclimates and fiercely proud local populace, make for a range of wines whose like will not be found elsewhere on earth [...].  

Parker's Wine Bargains: The World's Best Wine Values Under $25, p. 230


解説>







It can safely be said that this cast of vine characters, together with the unique microclimates and fiercely proud local populace, make for a range of wines whose like will not be found elsewhere on earth [...].

It は形式主語で、本当の主語は that 以下。It can safely be said that S V. で「SVと言って差し支えない」といった意味になります。

cast of characters は「演劇などを演じるキャスト」を表すフレーズです。この文では、コルシカのワインを作り出す個性豊かなブドウたちを、一緒に劇を演じるキャストに見立てています。

make for ~ は「~を可能にする/~を作るのに役立つ」といった意味の句動詞。

whose は wines を先行詞とする所有格の関係代名詞で、関係代名詞の節は whose から始まっています。元になっているのは、

~'s like will not be found elsewhere on earth.
(~に似たものは、地球上のどこにも見当たらない)

という文。
like はここでは「似たようなもの」という意味の名詞です。


It can safely be said that this cast of vine characters, together with the unique microclimates and fiercely proud local populace, make for a range of wines ←[whose like will not be found elsewhere on earth]

「この(個性豊かな)顔ぶれのブドウたちこそが、この土地独特の気候、そして非常に誇り高い島民と相まって、世界に類を見ないワインを作り上げていると言っても過言ではない」


次の例文の like も上と同じです。

It was a battle the like of which those present had never before witnessed.
(Longman Dictionary of Contemporary English)

関係代名詞の節が始まるのは the like から。先行詞は battle。元になっているのは、

Those present had never before witnessed the like of ~ .
(そこにいる人々は~に似たものをそれまでに見たことがなかった)

という文です。


It was a battle ←[the like of which   those present had never before witnessed].

「それは、そこにいる人々がそれまでに見たこともないような戦いだった」



007シリーズ『ゴールデンアイ』から。予告編はこちら


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ボンドは事件の黒幕の正体を探るにあたって、黒幕についての情報を持っているとされる Valentine という人物に接触を試みます。以下は、Valentine の居場所にボンドを車で案内する人物が、目的地に到着した際にボンドに対して言うセリフです。




Valentine operates out of building 23 there.

GoldenEye  (00:55:47)


<解説>







Valentine operates out of building 23 there.

out of ~ は通常「~の中から外へ」を表しますが、operate out of ~ は「~を拠点として活動している」という意味で使われます。

Valentine はそこにある23号棟の建物を拠点にしている

この用法の out of は TOEIC の公式本で見かけたことがあるので、受験される方は覚えておくとよいかもしれません。似た意味で使われるものに be based out of ~ もあります。


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