英語の音いろ

映画、TVドラマ、洋書などの英語を、文法や構文そしてニュアンスの視点から解説します。

タグ:動名詞


オスカー・ワイルドの小説『ドリアン・グレイの肖像』から。


The Picture of Dorian Gray (Penguin Classics)
Wilde, Oscar
Penguin Classics
2003-02-01



以下は、自分が主催するパーティーで、招待客の一人ひとりについて詳細な「解説」を加えずにはいられない Lady Brandon という婦人について、Lord Henry が友人に語る一節です。Lord Henry はこの小説の主要登場人物の1人で、そのシニカルな言動によって、主人公ドリアンが退廃的な生活を送るようになる大きなきっかけを作る人物です。

truculent は「怒りっぽい」、orders と ribbons は軍人が服につける勲章などのこと、audible は「聞こえる」、astonishing は「驚くべき」。



I remember her bringing me up to a truculent and red-faced old gentleman covered all over with orders and ribbons, and hissing into my ear, in a tragic whisper which must have been audible to everybody in the room, the most astonishing details.  

Oscar Wilde, The Picture of Dorian Gray, p. 11


<解説>







I remember her bringing me up to a truculent and red-faced old gentleman covered all over with orders and ribbons, and hissing into my ear, in a tragic whisper which must have been audible to everybody in the room, the most astonishing details.

bringing と hissing は動名詞で、bringing の前の her はこの2つの動名詞の意味上の主語。and は bringing ~ と hissing ~ をつないでいます。

bring O up to ~ で「Oを~のところに連れてくる」。

hiss はここでは他動詞です。hiss O で「O(=言葉など)を小さな、しかし激しい感じの声で言う」という意味で、the most astonishing details が hissing の目的語。hissing 以下は、VとOの間に副詞的な語句(M)が挿入されているVMOという形です。

「彼女が私を怒りっぽくて赤い顔をした、そこら中に勲章をつけた年配の紳士のところへ連れていって、部屋にいた全ての人に聞こえたに違いない悲劇的とでも言うべきささやき声で(その紳士についての)最も驚くべき赤裸々な事細かな事実を私に激しく耳打ちしたのを私は覚えている」


オスカー・ワイルドの小説『ドリアン・グレイの肖像』から。


The Picture of Dorian Gray (Penguin Classics)
Wilde, Oscar
Penguin Classics
2003-02-01



以下は、前回の記事で紹介した文のすぐ後に続く文で、前回と同じく、貴族の青年であるドリアン・グレイが、退廃的な考えに染まりながらも、社交界においては貴族としての振る舞いを保っていた様子を描く文章の一部です。文頭の His はドリアンのこと、settling はここでは preparing とほぼ同じ、Lord Henry はドリアンの友人です。




His little dinners, in the settling of which Lord Henry always assisted him, were noted as much for the careful selection and placing of those invited, as for the exquisite taste shown in the decoration of the table, [...].  

Oscar Wilde, The Picture of Dorian Gray, p. 125


<解説>







His little dinners, in the settling of which Lord Henry always assisted him, were noted as much for the careful selection and placing of those invited, as for the exquisite taste shown in the decoration of the table, [...].

which は His little dinners を先行詞とする非制限用法の関係代名詞で、関係代名詞の節が始まるのは in から。in the settling of which Lord Henry always assisted him の部分全体が関係代名詞の節です。元になっているのは、

Lord Henry always assisted him in the settling of ~
(Lord Henry は~の準備において常に彼に手を貸した)

という文。the ~ing of ... で「...を~すること」。「~ing」と「...」の間には、VO の関係が隠れています。

be noted as much for A as for B で「Bのためと同じくらいAのために注目される」。

the careful selection and placing of those invited の careful は、selection と placing の両方を修飾しています。placing の ing は上と同じ 
the ~ing of ...(...を~すること)の使い方。place O の基本の意味は「Oを(ある場所に)置く」で、ここでは「テーブルでのOの席順を決める」という意味です。


His little dinners, in the settling of which Lord Henry always assisted him, were noted as much for the careful selection and placing of those invited, as for the exquisite taste shown in the decoration of the table, [...].

「彼が催すちょっとした晩餐会(その準備にあたっては Lord Henry が常に彼に手を貸した)は、テーブルの装飾に示されるこの上なく優れたセンスのためにも注目されていたが、それと同じくらい、細心の注意を払ってなされるゲストの選別と席順の決定によっても注目されていた」



仕事でフランスに住むことになったイギリス人の著者がフランスの文化を紹介する本 A Certain Je Ne Sais Quoi: The Ideal Guide to Sounding, Acting and Shrugging Like the Frenchフランス人のように話したり振舞ったり肩をすくめたりするための完全ガイド)から。


A Certain Je Ne Sais Quoi
Charles Timoney
Particular Books
2009-09-22



フランスでもほぼ毎晩テレビで映画が放映されるそうです。以下は、ニュースと天気予報の後に映画をやることは分かっていても、それが何時に始まるのかがいつも分からないことについての著者の記述です。




It is never clear what time the news will end, nor how long the following weather forecast will last. Then comes the longest series of adverts that you will ever have seen in your life before there can be any question of the film starting.  

Charles Timoney, A Certain Je Ne Sais Quoi, p.15


解説>







It is never clear what time the news will end, nor how long the following weather forecast will last.

「ニュースが何時に終わるのか、そして次の天気予報がどれくらい続くのかは常に不明です」


Then comes the longest series of adverts that you will ever have seen in your life before there can be any question of the film starting.

全体は the longest ~ in your life の部分を主語とする MVS の倒置文です。

「will have + 過去分詞」が使われていますが未来完了ではなく、この文における「S will have + 過去分詞」は、Sが過去に行った事柄についての話者の確信/推量を表しています

before の後の部分は、There is no question of ~(~の可能性はない)というフレーズを変形したものです。starting は動名詞で、the film は動名詞の主語。

「そしてその後には、あなたがこれまでの人生で見たこともないほど長いコマーシャルが延々と続きます。肝心の映画が始まる可能性がほんのわずかでも生じるのは、さらにその後なのです


以下は英英辞典から。

There was no question of his/him cancelling the trip so near the departure date.
(Oxford Advanced Learner's Dictionary)

「出発の日がこれほど近づいている状態で、彼が旅行をキャンセルすることはあり得なかった」

代名詞が動名詞の主語になる場合、所有格と目的格のどちらも使えますが、所有格の方がフォーマルな表現です。


スイス在住のイギリス人の著者よる、スイスを紹介する本から。







以下は、リンゴ生産で知られるスイスのThurgau という州について書いた文章の一部です。canton は「州」、albeit ~ で「~ではあるけれども」。



Swiss people call [Thurgau] Mostindien, from Most in Swiss German meaning apple juice and the canton being shaped like India, albeit a slightly deformed, pre-independence India.  

Diccon Bewes, Swiss Watching: Inside the Land of Milk and Money, p. 223


解説>








Swiss people call [Thurgau] Mostindien, from Most in Swiss German meaning apple juice and the canton being shaped like India, albeit a slightly deformed, pre-independence India.

meaning と being は動名詞で、Most in Swiss German と the canton がそれぞれ動名詞の意味上の主語になっています。

「スイス人はThurgau州を Mostindien と呼びます。これは、スイスのドイツ語では Most が『リンゴジュース』を意味し、Thurgau州
がインドのような形をしていることによります。インドと言っても今とは少し違う、独立前のインドのような形ですが」


通常、固有名詞には不定冠詞の a を付けませんが、ここでは a slightly deformed, pre-independence India と a が付けられています。これは、a slightly deformed, pre-independence India が、インドという国が想像上あるいは現実に存在し得る、無数の形や状態の中の1つであるためです。インドという国の1つのバージョンと言ってもいいかもしれません。

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