オスカー・ワイルドの小説『ドリアン・グレイの肖像』から。
以下は、自分が主催するパーティーで、招待客の一人ひとりについて詳細な「解説」を加えずにはいられない Lady Brandon という婦人について、Lord Henry が友人に語る一節です。Lord Henry はこの小説の主要登場人物の1人で、そのシニカルな言動によって、主人公ドリアンが退廃的な生活を送るようになる大きなきっかけを作る人物です。
truculent は「怒りっぽい」、orders と ribbons は軍人が服につける勲章などのこと、audible は「聞こえる」、astonishing は「驚くべき」。
I remember her bringing me up to a truculent and red-faced old gentleman covered all over with orders and ribbons, and hissing into my ear, in a tragic whisper which must have been audible to everybody in the room, the most astonishing details.
Oscar Wilde, The Picture of Dorian Gray, p. 11
<解説>
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I remember her bringing me up to a truculent and red-faced old gentleman covered all over with orders and ribbons, and hissing into my ear, in a tragic whisper which must have been audible to everybody in the room, the most astonishing details.
bringing と hissing は動名詞で、bringing の前の her はこの2つの動名詞の意味上の主語。and は bringing ~ と hissing ~ をつないでいます。
bring O up to ~ で「Oを~のところに連れてくる」。
hiss はここでは他動詞です。hiss O で「O(=言葉など)を小さな、しかし激しい感じの声で言う」という意味で、the most astonishing details が hissing の目的語。hissing 以下は、VとOの間に副詞的な語句(M)が挿入されているVMOという形です。
「彼女が私を怒りっぽくて赤い顔をした、そこら中に勲章をつけた年配の紳士のところへ連れていって、部屋にいた全ての人に聞こえたに違いない悲劇的とでも言うべきささやき声で(その紳士についての)最も驚くべき赤裸々な事細かな事実を私に激しく耳打ちしたのを私は覚えている」