英語の音いろ

映画、TVドラマ、洋書などの英語を、文法や構文そしてニュアンスの視点から解説します。

タグ:倒置(CSV)


経済学の発展を辿る The Worldly Philosophers(1953年)から。





経済学の父と呼ばれるアダム・スミス(1723-1790)についての章で、著者は、アダム・スミスが当時の混沌とした社会に法則性を見出して、世界経済に多大な影響を与えることになる『国富論』を書き上げたのは驚くべきことだと述べます。

以下は、18世紀のイギリスにおける土地を持たない農民や炭鉱で働く子供たちの過酷な生活を描写した後に続く1文です。haphazard は「無秩序な」。



A strange, cruel, haphazard world this must have appeared to eighteenth-century as well as to our modern eyes.

Robert Heilbroner, The Worldly Philosophers, p. 44



<解説>







A strange, cruel, haphazard world this must have appeared to eighteenth-century as well as to our modern eyes.

A strange, cruel, haphazard world はC。全体は CSV という語順の倒置文です。
S appears C to ~ で「~の目にはSはCのように映る」。

eighteenth-century は形容詞。

to eighteenth-century (eyes)
as well as 
to our modern eyes

または、

to eighteenth-century (as well as to our modern) eyes

と読みます。


「18世紀の人々の目にも、これは奇妙で残酷で無秩序な世界に映ったことだろう。我々現代人の目にそう映るのと同じように」



オスカー・ワイルドの小説『ドリアン・グレイの肖像』から。


The Picture of Dorian Gray (Penguin Classics)
Wilde, Oscar
Penguin Classics
2003-02-01



ドリアン・グレイはたぐいまれな美しさを持つ青年で、この小説は彼の肖像画を画家が描いている場面で始まります。以下は、この画家が「ドリアングレイは自分にとって肖像画の単なるモデル以上の存在だ」ということを友人に伝える一節です。

Venetians は「ベネチア人」。Antinous は、ローマ皇帝ハドリアヌスの愛人となった美少年で、多くの芸術作品の題材となっています。



What the invention of oil-painting was to Venetians, the face of Antinous was to late Greek sculpture, and the face of Dorian Gray will some day be to me.  

Oscar Wilde, The Picture of Dorian Gray, p. 13


解説>







What the invention of oil-painting was to Venetians, the face of Antinous was to late Greek sculpture, and the face of Dorian Gray will some day be to me.

What the invention of oil-painting was to Venetians は C。全体は、

C, S1 V1, and S2 V2.

という形で、第2文型(VC)の C を主語の前に持ってきた倒置文です。


C, S1 was to late Greek sculpture, and S2 will some day be to me.

倒置を元に戻すと

S1 was C to late Greek sculpture, and S2 will some day be C to me.
(S1は後期ギリシャ彫刻にとって C だった。同様に、S2はいつの日か僕にとって C になるだろう)

to ~ は「~にとって」という意味です。


C の部分に相当する What the invention of oil-painting was to Venetians は「ベネチア人にとっての油絵の発明」つまり「それまでになかった新しい芸術を可能にするもの」を表しています。


What the invention of oil-painting was to Venetians, the face of Antinous was to late Greek sculpture, and the face of Dorian Gray will some day be to me.

「S1は後期ギリシャ彫刻にとって新しい芸術を可能にするものだった。同様に、S2はいつの日か僕にとって新しい芸術を可能にするものになるだろう」



「後期ギリシャ彫刻にとってアンティノウスの顔とは、ベネチア人にとって油絵の発明がそうであったように、それまでになかった新しい芸術様式を可能にするものだった。同様に、ドリアングレイの顔は、いつの日か僕をして、今までになかった新しい芸術様式を確立せしめるだろう」

 

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