英語の音いろ

映画、TVドラマ、洋書などの英語を、文法や構文そしてニュアンスの視点から解説します。

タグ:仮定法


イギリスの文学批評家、文化理論家テリー・イーグルトンによる Reason, Faith, and Revolution(2009年)から。





以下は、クリスチャンにとってキリストの復活とはどのようなものなのかを述べる文章の一部です。resurrection は「キリストの復活」、lurk は「ひそむ」、arm O with ~ で「Oに~という装備を与える」



The resurrection for Christians is not a metaphor. It is real enough, but not in the sense that you could have taken a photograph of it had you been lurking around Jesus's tomb armed with a Kodak.

Terry Eagleton, Reason, Faith, and Revolution, p. 119



<解説>







The resurrection for Christians is not a metaphor. It is real enough,

「クリスチャンにとってキリストの復活とは比喩的なものではない。それは真実といってよいものである」


but not in the sense that you could have taken a photograph of it had you been lurking around Jesus's tomb armed with a Kodak.

in the sense that S V で「SVという意味で」。

had you been ~ →「if S had + 過去分詞」(仮にSが~していたなら)と同等の意味を「had S + 過去分詞」で表すことができます。「had S + 過去分詞」の方がフォーマルな言い方。

armed with ~ は、arm O with ~(Oに~という装備を与える)の過去分詞を使った分詞構文です。

本来固有名詞であるはずの Kodak に不定冠詞の a がついているのは、ここでは Kodak が「コダック製のカメラ」という意味で一般名詞として使われているためです。

「しかし真実といっても、コダックのカメラを持ってキリストの墓の近くに潜んでいたらキリストの復活の写真を撮ることができたはずだという意味でのことではない」


イギリスの文学批評家、文化理論家テリー・イーグルトンによる Hope without Optimism(2015年)から。現代において、現実を見つめながら希望を持つということはどのようなことなのかを考察する本です。


Hope Without Optimism
Terry Eagleton
Yale University Press
2017-06-02



チェコの作家フランツ・カフカ(1883-1924)は、ヨーロッパの状況を憂える友人に「我々が見知っているこの世界を超越した hope というものは存在するのだろうか」と尋ねられた際に、「たくさん、いや、無限に存在するといっていい。だが我々にとって存在するわけではない」という、解釈の余地を残す答え方をしたそうです。以下は、この答えを受けての著者イーグルトンの(少しユーモアを込めた)推測です。

he はカフカのこと、off と dyspeptic はともに「機嫌の悪い」、dire は「ひどい」



Perhaps he meant that the universe as we know it is a bad mood of God's, created on an off day, and that had his temper at the time been less dyspeptic, things on earth might have been considerably less dire.

Terry Eagleton, Hope without Optimism, p. 73



<解説>







Perhaps he meant that the universe as we know it is a bad mood of God's, created on an off day, and that had his temper at the time been less dyspeptic, things on earth might have been considerably less dire.

全体の骨格は、he meant that S V and that S V.。and は2つの that節をつないでいます。


the universe as we know it is a bad mood of God's, created on an off day

「名詞 as S knows it」で「Sが知っているような名詞」。created ~ は分詞構文。

「我々が知っている世界とは、神の機嫌が悪い日に創られた、いわば神の不機嫌さの表出である」


had his temper at the time been less dyspeptic, things on earth might have been considerably less dire

「if S had + 過去分詞」(仮にSが~していたなら)と同等の意味を「had S + 過去分詞」で表すことができます。「had S + 過去分詞」の方がフォーマルな言い方。

「そのときの神の機嫌がもっと良かったなら、この地球上の状況はずっとましだったかもしれない」


Perhaps he meant that the universe as we know it is a bad mood of God's, created on an off day, and that had his temper at the time been less dyspeptic, things on earth might have been considerably less dire.

我々が知っている世界とは、神の機嫌が悪い日に創られた、いわば神の不機嫌さの表出であり、そのときの神の機嫌がもっと良かったなら、この地球上の状況はずっとましだったかもしれない、といったことを彼はあるいは言いたかったのかもしれない」


ちなみに、カフカと友人の前述のやりとりに先立って、カフカは our world is only a bad mood of God, a bad day of his. と言った
とされ、イーグルトンの the universe as we know it is a bad mood of God's という記述は、その発言を受けています。


今回は英英辞典の例文から。



(普通に単語を調べるだけであればオンラインで無料で使えます)


通常、「A and B」という形では、AとBには「動詞と動詞」「名詞と名詞」「文と文」など対等のものが入りますが、例外もあります。

① 



Only a year ago and this would have seemed impossible.  

(Oxford Advanced Learner's Dictionary)


② 


One look at his face and Jenny stopped laughing.

(Oxford Advanced Learner's Dictionary)


解説>









Only a year ago and this would have seemed impossible.

この文においては、Only a year ago and はこれだけで「わずか1年前であったとしても」という意味を表します。そして、この仮定を受けて would が使われています。

「たった1年前であったとしても、このようなことは不可能だと思われただろう」
(この1年で急速に技術が進んだ/事態が進展した、など)

Only a year ago and だけで、仮定法大過去を含む if 節(if S had + 過去分詞)と同等の働きをしていると言えます。仮定法を含む if 節や、それと同等の仮定を受けると、主節には助動詞の過去形が使われます。




One look at his face and Jenny stopped laughing.

One look at his face and だけで、「彼の顔を一目見るなり」という意味を表します。

彼の顔を一目見るなり、ジェニーは笑うのをやめた

One look at ~ and も割とよくある表現です。


前回に引き続き、concerning which を含む素材です。

① イギリスの Strathclyde 大学のウェブサイトから。大学の危機管理についての一節です。



The University has a variety of equipment, materials and substances concerning which the UK Government has issued specific guidance.  

https://www.strath.ac.uk/safetyservices/specialisthealthsafety/



② イギリスの Loughborough 大学のウェブサイトから。以下は、学生からの相談や苦情を受け付ける手続きについて書かれた文章の一部です。



Should there be any doubt concerning which procedure applies in an individual case, the Academic Registrar shall advise.

https://www.lboro.ac.uk/governance/ordinances/38/current/



解説>









The University has a variety of equipment, materials and substances concerning which the UK Government has issued specific guidance.


which は a variety of equipment, materials and substances を先行詞とする関係代名詞で、自身がまとめる形容詞節の内部では、concerning という前置詞の目的語として働いています。concerning ~ で「~に関して/~に関する」。関係代名詞の節が始まるのは which からではなく、concerning から。元になっているのは、

The UK Government has issued specific guidance concerning ~ .
(イギリス政府は~について明確な手順を定めている)


という文です。

この現在完了は「手順を定めた結果、現在、手順が定められている(だから、それに従わなければならない)」という意味を表す結果の用法です。


The University has a variety of equipment, materials and substances ←[concerning which    the UK Government has issued specific guidance].

「扱い方に関してイギリス政府が明確な手順を定めている各種の機器、マテリアル、化学物質を当大学では保有しています





Should there be any doubt concerning which procedure applies in an individual case, the Academic Registrar shall advise.

「should S ~」で「if S should ~」(Sが~した場合には)と同内容を表すことができます。「should S ~」の方が硬い表現。There is 構文の There は実際には主語ではありませんが、語順の上では主語と同じように扱われます。

which は①の場合と異なり、関係代名詞ではなく疑問詞で、concerning という前置詞の目的語となる名詞節

which procedure applies in an individual case
(個々のケースにおいて、どの手順が適用されるのか)

をまとめています。この名詞節の内部では、which は「どの」という意味で procedure を修飾しています。


Should there be any doubt ←[concerning    which procedure applies in an individual case],

個々のケースにおいてどの手順が適用されるのかについて疑問がある場合には


the Academic Registrar shall advise.

shall はここでは will とほぼ同じです。

「手続きの担当職員がアドバイスします」



前回紹介した、フランスに住むイギリス人の著者がフランスの文化を描いた本から。

A Certain Je Ne Sais Quoi
Charles Timoney
Particular Books
2009-09-22



タイトルの je ne sais quoi(英語に直すと I don't know what)はフランス語由来の英熟語で、「言葉では表現しがたい魅力」を表します。certain はここでは「ある種の」。je ne sais quoi は不可算名詞ですが、不定冠詞の a がつけられています。

seriousness(真剣さ)や sadness(悲しみ)といった抽象的な意味を持つ不可算名詞でも、「どんな真剣さなのか」あるいは「どんな悲しみなのか」など、特定の「種類」や「タイプ」を意識しているときには、次のように a がつけられることがあります。

He spoke with a seriousness that was unusual in him.
(Oxford Advanced Learner's Dictionary)

(彼は、普段の彼には見られない真剣さで話をした)

本のタイトルの A Certain Je Ne Sais Quoi(言葉では表現しがたいある種の魅力)に a がつけられているのも同じ理由で、certain(ある種の)がついているためです。


ちなみにこの本の副題は

The Ideal Guide to Sounding, Acting and Shrugging Like the French

フランス人のように話したり振舞ったり肩をすくめたりするための完全ガイド

となっていて、実際に本文にはフランス人独特の肩のすくめ方についての記述があります。以下はその一部です。




Were shrugging an Olympic sport, the French would be sure of winning the gold medal every four years. The French shrug often, and they shrug splendidly.  

Charles Timoney, A Certain Je Ne Sais Quoi, p.59



解説>







Were shrugging an Olympic sport, the French would be sure of winning the gold medal every four years.

「were S ~」で「if S were ~」と同等の内容を表すことができます。「were S ~」の方が硬い表現。

「もし肩をすくめることがオリンピックの競技だったら、毎回金メダルを獲得できるとフランス人は確信していることでしょう」


The French shrug often, and they shrug splendidly.

「彼らは頻繁に肩をすくめ、しかも見事なやり方でそうするのです」


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