イギリスの文学批評家、文化理論家テリー・イーグルトンによる Hope without Optimism(2015年)から。現代において、現実を見つめながら希望を持つということはどのようなことなのかを考察する本です。
以下は、現代社会において hope という語が持っているかもしれない、必ずしも肯定的とは言えないニュアンスについての1文です。slender は「細い」、reed は「茎の中が空洞になっている葦などの植物」、scanty は「乏しい/ないに等しい」。
Hope is a slender reed, a castle in the air, agreeable company but a poor guide, fine sauce but scanty food.
Terry Eagleton, Hope without Optimism, p. 39
<解説>
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Hope is a slender reed, a castle in the air, agreeable company but a poor guide, fine sauce but scanty food.
この文では、SVC のCとして
a slender reed
a castle in the air
agreeable company but a poor guide
fine sauce but scanty food
という4つの名詞が並列されています。通常、複数のものを並列する場合には「A, B, C and D」のように and が使われますが、ここでは1つの内容を異なる表現で言い換えているだけなので and は使われていません。
slender reed(細い葦)は「頼りにならないもの」を表す表現で、castle in the air(空中の城)も「砂上の楼閣」といった意味の熟語です。company はここでは「そばにいて一緒に時間を過ごす人」の意。
「hope とは、細い葦(=頼りにならないもの)であり、砂上の楼閣であり、一緒にいて楽しいが案内人としては役に立たない人であり、素晴らしいソースであるがお腹を満たさないものである」