イギリスの文学批評家、文化理論家テリー・イーグルトンによる Hope without Optimism(2015年)から。現代において、現実を見つめながら希望を持つということはどのようなことなのかを考察する本です。


Hope Without Optimism
Terry Eagleton
Yale University Press
2017-06-02



チェコの作家フランツ・カフカ(1883-1924)は、ヨーロッパの状況を憂える友人に「我々が見知っているこの世界を超越した hope というものは存在するのだろうか」と尋ねられた際に、「たくさん、いや、無限に存在するといっていい。だが我々にとって存在するわけではない」という、解釈の余地を残す答え方をしたそうです。以下は、この答えを受けての著者イーグルトンの(少しユーモアを込めた)推測です。

he はカフカのこと、off と dyspeptic はともに「機嫌の悪い」、dire は「ひどい」



Perhaps he meant that the universe as we know it is a bad mood of God's, created on an off day, and that had his temper at the time been less dyspeptic, things on earth might have been considerably less dire.

Terry Eagleton, Hope without Optimism, p. 73



<解説>







Perhaps he meant that the universe as we know it is a bad mood of God's, created on an off day, and that had his temper at the time been less dyspeptic, things on earth might have been considerably less dire.

全体の骨格は、he meant that S V and that S V.。and は2つの that節をつないでいます。


the universe as we know it is a bad mood of God's, created on an off day

「名詞 as S knows it」で「Sが知っているような名詞」。created ~ は分詞構文。

「我々が知っている世界とは、神の機嫌が悪い日に創られた、いわば神の不機嫌さの表出である」


had his temper at the time been less dyspeptic, things on earth might have been considerably less dire

「if S had + 過去分詞」(仮にSが~していたなら)と同等の意味を「had S + 過去分詞」で表すことができます。「had S + 過去分詞」の方がフォーマルな言い方。

「そのときの神の機嫌がもっと良かったなら、この地球上の状況はずっとましだったかもしれない」


Perhaps he meant that the universe as we know it is a bad mood of God's, created on an off day, and that had his temper at the time been less dyspeptic, things on earth might have been considerably less dire.

我々が知っている世界とは、神の機嫌が悪い日に創られた、いわば神の不機嫌さの表出であり、そのときの神の機嫌がもっと良かったなら、この地球上の状況はずっとましだったかもしれない、といったことを彼はあるいは言いたかったのかもしれない」


ちなみに、カフカと友人の前述のやりとりに先立って、カフカは our world is only a bad mood of God, a bad day of his. と言った
とされ、イーグルトンの the universe as we know it is a bad mood of God's という記述は、その発言を受けています。