英語の音いろ

映画、TVドラマ、洋書などの英語を、文法や構文そしてニュアンスの視点から解説します。

2020年06月


オスカー・ワイルドの小説『ドリアン・グレイの肖像』から。


The Picture of Dorian Gray (Penguin Classics)
Wilde, Oscar
Penguin Classics
2003-02-01



ドリアンが婚約者に冷酷な仕打ちをした夜、自宅に戻った彼は、自室に置いてある自分の肖像画の美しい口元に冷たい影が生じているのに気づきます。ドリアンは恐れを抱きながらも、自分の心と肖像画の絵の具の間に何らかのつながりがあるのではないかと興味を持ちます。以下は、そのときにドリアンが考えたことを伝える文です。

that soul は「ドリアンの心」、they は「肖像画の絵の具を構成する物質」を指しています。




Could it be that what that soul thought, they realized? - that what it dreamed, they made true?  

Oscar Wilde, The Picture of Dorian Gray, p. 93


解説>







Could it be that what that soul thought, they realized? - that what it dreamed, they made true?

Could it be that S V? で「SVということなのだろうか?」。it は状況を指しているとも言えます。

what that soul thought, they realized は OSV、

what it dreamed, they made true は OSVC という語順の倒置文です。realized、dreamed と過去形になっているのは、先頭に Could が使われていることによる時制の一致と捉えるとよいでしょう。

realize はここでは「気づく」ではなく「具現化する」という意味です。


「自分の心が思うことをそれらが具現化するのだろうか。自分の心が夢見ることをそれらが実現するのだろうか」


007シリーズ Quantum of Solace(邦題『慰めの報酬』)(2008年)から。予告編はこちら


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ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
2018-03-16



ボンドは死闘の末ある敵を倒しますが、その敵が死んだことで、その背後にいる人物を突き止める手がかりを失ってしまいます。以下は、そのことでボンドを叱責する上司のセリフです。



And you had to kill him! Couldn't bring him in for questioning so that we might actually learn something.

Quantum of Solace  (00:16:02)


<解説>







And you had to kill him! 

直訳すると「殺さなければならなかった」となりますが、これは皮肉で「なぜ殺してしまわなければならなかったのか?」「殺すべきではなかった。殺してしまうとは無能だ」という意味を表しています。前回の記事で紹介した『アナと雪の女王』における had to の使い方と似ています。

「なぜ殺してしまったのか!」


Couldn't bring him in for questioning.so that we might actually learn something.

主語の you が省略されています。bring O in はここでは「Oの身柄を拘束する」という意味です。

「尋問して(背後にいる人物について)手がかりが得られるよう生かして拘束できないとは」




Parker's Wine Bargains(邦題『ワインの帝王ロバート・パーカーが薦める世界のベスト・バリューワイン』)(2009年)から。





以下は、オーストリアのワインに使われるブドウの品種を紹介する
文章の一部です。Pinot Noir と St. Laurent はそれぞれブドウの品種名、Blauer Spӓtbrugunder は Pinot Noir のオーストリアでの呼び名、variety は「種」、acreage は「面積」。



Pinot Noir (Blauer Spӓtbrugunder) and its offspring [...] Austrian variety St. Laurent make up in intrigue for what (at least as yet) they lack in sheer acreage.  

Parker's Wine Bargains: The World's Best Wine Values Under $25, p. 55


解説>







Pinot Noir (Blauer Spӓtbrugunder) and its offspring [...] Austrian variety St. Laurent make up in intrigue for what (at least as yet) they lack in sheer acreage. 

make up in intrigue for ~ は、make up for ~(~を補う)の中に in intrigue(興味深さにおいて)が挿入されたもの。in intrigue と in sheer acreage が対比されています。

「ピノ・ノワール(別名 Blauer Spӓtbrugunder)と、ピノ・ノワールから派生したオーストリアの品種である St. Laurent は、興味深さの点で、それらが絶対的な作付面積の点で(少なくとも今のところ)欠いているものを補っている」



「ピノ・ノワール(別名 Blauer Spӓtbrugunder)と、ピノ・ノワールから派生したオーストリアの品種である St. Laurent の興味深さは、この2品種の作付面積の(少なくとも現時点での)小ささを補って余りある」


イギリスの文学批評家、文化理論家テリー・イーグルトンによる Hope without Optimism(2015年)から。現代において、現実を見つめながら希望を持つということはどのようなことなのかを考察する本です。


Hope Without Optimism
Terry Eagleton
Yale University Press
2017-06-02



チェコの作家フランツ・カフカ(1883-1924)は、ヨーロッパの状況を憂える友人に「我々が見知っているこの世界を超越した hope というものは存在するのだろうか」と尋ねられた際に、「たくさん、いや、無限に存在するといっていい。だが我々にとって存在するわけではない」という、解釈の余地を残す答え方をしたそうです。以下は、この答えを受けての著者イーグルトンの(少しユーモアを込めた)推測です。

he はカフカのこと、off と dyspeptic はともに「機嫌の悪い」、dire は「ひどい」



Perhaps he meant that the universe as we know it is a bad mood of God's, created on an off day, and that had his temper at the time been less dyspeptic, things on earth might have been considerably less dire.

Terry Eagleton, Hope without Optimism, p. 73



<解説>







Perhaps he meant that the universe as we know it is a bad mood of God's, created on an off day, and that had his temper at the time been less dyspeptic, things on earth might have been considerably less dire.

全体の骨格は、he meant that S V and that S V.。and は2つの that節をつないでいます。


the universe as we know it is a bad mood of God's, created on an off day

「名詞 as S knows it」で「Sが知っているような名詞」。created ~ は分詞構文。

「我々が知っている世界とは、神の機嫌が悪い日に創られた、いわば神の不機嫌さの表出である」


had his temper at the time been less dyspeptic, things on earth might have been considerably less dire

「if S had + 過去分詞」(仮にSが~していたなら)と同等の意味を「had S + 過去分詞」で表すことができます。「had S + 過去分詞」の方がフォーマルな言い方。

「そのときの神の機嫌がもっと良かったなら、この地球上の状況はずっとましだったかもしれない」


Perhaps he meant that the universe as we know it is a bad mood of God's, created on an off day, and that had his temper at the time been less dyspeptic, things on earth might have been considerably less dire.

我々が知っている世界とは、神の機嫌が悪い日に創られた、いわば神の不機嫌さの表出であり、そのときの神の機嫌がもっと良かったなら、この地球上の状況はずっとましだったかもしれない、といったことを彼はあるいは言いたかったのかもしれない」


ちなみに、カフカと友人の前述のやりとりに先立って、カフカは our world is only a bad mood of God, a bad day of his. と言った
とされ、イーグルトンの the universe as we know it is a bad mood of God's という記述は、その発言を受けています。


オスカー・ワイルドの小説『ドリアン・グレイの肖像』から。


The Picture of Dorian Gray (Penguin Classics)
Wilde, Oscar
Penguin Classics
2003-02-01



以下は、ある日のドリアンの部屋の様子です。incrust O with ~ で「Oを~で覆う」、nacre は「真珠」、guardian は「後見人」、invalid は「介護を必要とする病人」。his guardian の his はドリアンを指します。また、Lord Henry はドリアンの友人です。




On a little table of dark perfumed wood thickly incrusted with nacre, a present from Lady Radley, his guardian's wife, a pretty professional invalid, who had spent the preceding winter in Cairo, was lying a note from Lord Henry, and beside it was a book bound in yellow paper, the cover slightly torn and the edges spoiled.  

Oscar Wilde, The Picture of Dorian Gray, p. 119


解説>







On a little table of dark perfumed wood thickly incrusted with nacre, a present from Lady Radley, his guardian's wife, a pretty professional invalid, who had spent the preceding winter in Cairo, was lying a note from Lord Henry,

a present ~ in Cairo の部分を読んでいる間は、この部分が主語なのか、それとも a little table ~ nacre と同格なのかを100パーセント決めることはできませんが、was lying a note を見た時点で同格であることが確定します(a present ~ in Cairo の部分が主語だとすると、a note ~ の役割がなくなってしまうため)

この文は、a note from Lord Henry を主語とする、MVS という語順の倒置文です(Mは副詞的に働く部分)。

his guardian's wife と a pretty professional invalid はともに Lady Radley と同格。

「香りをつけられた色の濃い木で作られ、真珠の厚い層で飾られた小さなテーブルの上に、Lord Henry からのメモが載せられていた(このテーブルは、ドリアンの後見人の妻で、美しい“職業的”病人であり、その前の冬をカイロで過ごしていた Lady Radley からの贈り物であった)」


and beside it was a book bound in yellow paper, the cover slightly torn and the edges spoiled.

この文も MVS の倒置文で、主語は a book bound in yellow paper。beside it で「その横に」。

the cover 以降は独立分詞構文(主語つきの分詞構文)です。

「そしてその横には、黄色の紙で綴じられた本が置いてあった。カバーは少し破け、端の部分は傷んでいた」


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