英語の音いろ

映画、TVドラマ、洋書などの英語を、文法や構文そしてニュアンスの視点から解説します。

2019年03月


作曲家ヨハネス・ブラームスの手紙のコレクションに解説を加えた本『Johannes Brahms: Life and Letters』から。


Johannes Brahms: Life and Letters
Johannes Brahms
Oxford Univ Pr on Demand
2001-09-27



以下は、1873年にブラームスがミュンヘンの国王ルートビッヒ2世から勲章を授けられたことについての編者の文章です。




The honour was the more surprising as Brahms's music was virtually ignored in Munich at that time; [...]. 

Johannes Brahms: Life and Letters, p. 459



解説>







The honour was the more surprising as Brahms's music was virtually ignored in Munich at that time

the more surprising で the が使われているのは、「『その分だけ』もっと」と、more の度合いが特定されているからです。

「当時ミュンヘンではブラームスの音楽は事実上無視されていたために、この勲章は、その分より一層意外であった」


受験で出てくる 「all the + 比較級」も同じ用法で、all は「その分だけより一層」を強調しています。




作曲家ヨハネス・ブラームスの手紙のコレクションに解説を加えた本『Johannes Brahms: Life and Letters』から。


Johannes Brahms: Life and Letters
Johannes Brahms
Oxford Univ Pr on Demand
2001-09-27



以下は、ブラームスが 義母の Karoline と長期にわたってまめに連絡を取っていたことを述べる編者の文章です。




[...] Brahms wrote dozens of letters [...] to Karoline, kept her informed at all times of his whereabouts, and stayed in touch as lovingly and dutifully as if it were she who had given him life.

Johannes Brahms: Life and Letters, p. 438



解説>







Brahms wrote dozens of letters [...] to Karoline, kept her informed at all times of his whereabouts, and stayed in touch as lovingly and dutifully as if it were she who had given him life.

as if it were ~ の as は、as if ~ (まるで~かのように)ではなく、as ~ as ... (…と同じくらい~)の用法です。

1つ目の as は「同じくらい」、2つ目の as は「as ~」で「~と」。if S V は「S が V する場合」。

合わせると「as ~ as if S V 」で「S が V する場合と同じくらい~」という意味になります。


if it were she who had given him life

if 節の内部は強調構文に仮定法過去が適用されたもの。
「仮に彼に生を与えたのが彼女であった場合」



Brahms wrote dozens of letters [...] to Karoline, kept her informed at all times of his whereabouts, and stayed in touch as lovingly and dutifully as if it were she who had given him life.

「ブラームスは(義母の)Karoline に多数の手紙を書き、常に彼自身の居場所を知らせ、彼に生を与えたのが彼女であった場合と同じくらい愛情を込めて、そして親への責任を果たす息子として、彼女と連絡を取り続けた」


if S V というと「もし~なら」を思い浮かべがちですが、「S が V する場合」という意味でもあります。as if S V (まるでS が V するかのように)は、as ~ (~ように)と if S V(S が V する場合)が組み合わされたもので、もともとは「(仮に)S が V する場合のように」という意味です。




作曲家ヨハネス・ブラームスの手紙のコレクションに解説を加えた本『Johannes Brahms: Life and Letters』から。


Johannes Brahms: Life and Letters
Johannes Brahms
Oxford Univ Pr on Demand
2001-09-27



以下は、ブラームスが Buxtehude という作曲家の 実力を認め、自らも彼の曲の楽譜を手に入れ、その作品を世に広めようとしていたことについての編者の文章です。

冒頭の he はブラームス、Passacaglia は Buxtehude の曲の1つ、pieces とはBuxtehude の曲のこと、Spitta はブラームスの知人です。




[...] he was interested in making Buxtehude's Passacaglia known to the world: on his own he had discovered a copy of one of the very pieces Spitta was having copied for him.

Johannes Brahms: Life and Letters, p. 462



解説>







he was interested in making Buxtehude's Passacaglia known to the world

「彼は Buxtehude の Passacaglia を世に知らしめようと考えていた


on his own he had discovered a copy of one of the very pieces Spitta was having copied for him.

pieces の後ろは関係代名詞の省略。元になっているのは、

Spitta was having O copied for him.(Spitta は彼のためにOを写してもらっていた)

という第5文型(VOC)の文で、関係代名詞は、自身の節の中では having の目的語として働いています。「have O 過去分詞」は「Oを~してもらう」という意味です。

「Spitta がブラームスのために筆写してもらっていた(Buxtehude の)曲のうち1曲の楽譜を、ブラームスは自分で見つけていた」


he had discovered と過去完了が使われているのは、ブラームスがBuxtehude の Passacaglia を世に知らしめようと考えていた」ときの状況や背景を、on his own he had discovered ~ の部分が示しているからです。



作曲家ヨハネス・ブラームスの手紙のコレクションに解説を加えた本『Johannes Brahms: Life and Letters』から。


Johannes Brahms: Life and Letters
Johannes Brahms
Oxford Univ Pr on Demand
2001-09-27



以下は、ブラームスが友人宛てに書いた手紙の中にあった「カールスルーエ (Karlsruhe) で会えるのを楽しみにしている」という記述についての、編者による解説の一部です。

Triumphlied(Op. 55『凱旋の歌』) はブラームスが作曲した曲、Karlsruhe はドイツ南部の都市、Levi は、ブラームスと親交のあった指揮者です。




The hope expressed of seeing his friends in Karlsruhe referred to a forthcoming performance of the complete Triumphlied, conducted by Levi.

Johannes Brahms: Life and Letters, p. 440



解説>







The hope expressed of seeing his friends in Karlsruhe referred to a forthcoming performance of the complete Triumphlied, conducted by Levi.

The hope expressed of seeing his friends in Karlsruhe が主語。

expressed of ~ という熟語があるわけではなく、of seeing ~ の部分は hope を修飾しています。hope of ~ing で「~したいという希望」。

全体は、

「(ブラームスによって手紙に)記されている、カールスルーエで友人に会いたいという希望は、開催日が近づいていた、Levi 指揮による『凱旋の歌』全曲の演奏会のことである」

つまり

「カールスルーエで友人に会うのを楽しみにしていると手紙に書いてあるのは、開催日が近づいていた、Levi 指揮による『凱旋の歌』全曲の演奏会で友人に会うことを指している」



イギリスのスパイ小説作家ジョンカレ原作の映画『Tinker Tailor Soldier Spy』(邦題『裏切りのサーカス』)から。冷戦時のイギリスとソ連の諜報戦を扱った映画です。


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Happinet(SB)(D)
2014-12-02



英国諜報員 Ricki Tarr は、ハンガリーで接触したソ連の女性スパイ Irina から「ソ連側の秘密を教える代わりに、自分をイギリスに亡命させてほしい」と頼まれ、亡命させようとします。しかし、その準備を始めた矢先に、なぜかハンガリーにいる英国諜報員たちの身元がソ連側に漏れて、Ricki の仲間の諜報員が殺され、さらに Irina もソ連側に捉えられてしまいます。

以下は、ソ連の手を逃れてイギリスに帰国した Ricki が、元の上司であり今は情報部を引退している George Smiley に、「Irina を助け出したい」と密かに相談する場面です。Ricki は行方をくらましていたため、イギリス側からも追われています。

Ricki はいつの間にか Irina に恋愛感情のようなものを抱いていて、「彼女をもっと早く助け出してさえいれば」と悔やんでいます。文中に出てくる Karla はソ連の情報部のトップです。




Ricki Tarr:        I've got to get her out. I owe her that.

George Smiley:Karla will be looking for you.

Ricki Tarr:        Everybody's looking for me.

Tinker Tailor Soldier Spy  (00:55:33)



<解説>







Ricki Tarr:I've got to get her out. I owe her that.

have got to do は have to do と同じ。owe A B は「A に B を負う」。

「僕は彼女を助け出さなければならない。それ(=彼女を助け出すこと)は僕が彼女に対して負っている義務なんです」


George Smiley:Karla will be looking for you.

この will は「現在の事柄についての推量」を表す用法です。未来のことを言っているわけではありません。

「Karla が君を見つけ出そうとしているはずだ」


Ricki Tarr:Everybody's looking for me.

「僕は皆に追われているんです」


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