英語の音いろ

映画、TVドラマ、洋書などの英語を、文法や構文そしてニュアンスの視点から解説します。

2019年02月


ハリーポッター第2作目『ハリー・ポッターと秘密の部屋』から。


ハリー・ポッターと秘密の部屋 [WB COLLECTION] [Blu-ray]
ダニエル・ラドクリフ
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
2018-03-17



主人公 Harry の通う魔法学校では、最近「秘密の部屋」にいるモンスターを誰かが部屋から出してしまい、そのために生徒がモンスターに襲われています。

以下は、ある人物が Harry に「『秘密の部屋』を開けた犯人は Ginny Weaseley だ」と告げる場面です。Ginny Weaseley は Harry の親友 Ron の妹で、Harry には Ginny がそのようなことをする人だとはとても思えません。




ある人物:Harry, it was Ginny Weaseley who opened the Camber of Secrets.

Harry:No. She couldn't. She wouldn't.

Harry Potter and the Chamber of Secrets  (02:05:49)



<解説>







ある人物:Harry, it was Ginny Weaseley who opened the Camber of Secrets.

it と who は強調構文。
「ハリー、『秘密の部屋』を開けたのは (お前の親友 Ron の妹の)Ginny Weaseley だよ」


Harry:No. She couldn't. She wouldn't.

「彼女には」そして「『秘密の部屋』を開けてしまうようなことは」に含まれる仮定を受けて、助動詞が過去形になっています。過去形が使われていますが、過去のある特定の時点のことを言っているわけではなく、最近も含めた現在の状態を表しています。

「いや、彼女には(『秘密の部屋』を開けることは)できないはずだし、(そもそもそんなことを)しようとするはずがない」



画家ゴッホの実際の人物像を、本人や家族の手紙などからできるだけ忠実に再現する目的で作られたBBCのドキュメンタリー映画『ゴッホ:真実の手紙』から。イギリス人俳優ベネディクト・カンバーバッチがゴッホを演じています。



(イギリスのDVDは、日本国内用の通常のDVDプレイヤーでは再生できません。ご注意ください)



ゴッホの故郷では織物の生産が盛んで、ゴッホは故郷に戻った際に、周りに多くあった織機を見て、絵の題材としての織機(loom)の可能性に注目します。以下はその当時のゴッホのセリフです。

当時の織機は木でできた、かなり大型で複雑な機構を持った機械です。lend oneself to ~ は「~に適している」。



I think the looms, with that quite complicated machinary, in the middle of which sits the little figure, will also lend themselves to pen drawings.

Van Gogh: Painted with Words, (00:19:27)



<解説>







I think the looms, with that quite complicated machinary, in the middle of which sits the little figure, will also lend themselves to pen drawings.

関係代名詞の節が始まるのは in から。先行詞は that quite complicated machinary。

関係代名詞の節 in the middle of which sits the little figure は MVS の倒置で、the little figure が主語になっています(M は副詞として働く部分です)。

「その真ん中に、小さな人物が座っている」


I think the looms, with that quite complicated machinary, in the middle of which sits the little figure, will also lend themselves to pen drawings.

「織機は、あの複雑な機構のために(その複雑な機構の真ん中には、織物職人の姿が小さく見える)、
インクで描く絵の題材としても適すると私は思う」



イギリスのサッカー選手ウェイン・ルーニーがプレミアリーグでの10年を振り返る本『Wayne Rooney: My Decade in the Premier League』から。


Wayne Rooney: My Decade in the Premier League
Wayne Rooney
HarperCollins Publishers
2012-09-01



以下は、選手として有名になると、外出した際にどうしても注目されてしまうことについて述べる文章です。



One afternoon, [...] I go to the garage to fill the car up. As I put the petrol in, a bloke pulls up next to me and winds his window down.
  'Here, Wayne, you fill up your own car yourself, do you?'
  Like anyone else is going to do it.

Wayne Rooney: My Decade in the Premier League, ペーパーバック版 p. 45
(斜体と最後の2文のインデントは原文の通りです)



<解説>







One afternoon, [...] I go to the garage to fill the car up. As I put the petrol in, a bloke pulls up next to me and winds his window down.

現在形の動詞が使われていますが、述べられているのは過去のことです。これは「the historic present」と呼ばれる現在形の使い方で、臨場感を出したいときなどには、過去の一連の出来事を現在形で説明することがあります。

the garage は、「自分がいつも行く近所のガソリンスタンド」のこと。自分が普段の買い物をするスーパーなどには、たとえ聞き手がその店を知らなくても the shop のように the を付けます。the garage の the も同じ用法です。

また、冷蔵庫など、どの家にもだいたい1台あるような「家の備品」にも the が付けられます。the car の the も同じ用法で、「自分の家の車」のことです。


「ある日の午後、家の車にガソリンを入れようと、いつものガソリンスタンドに行った。ガソリンを入れていたら、男が私の隣に車を止めて窓を下ろした」



'Here, Wayne, you fill up your own car yourself, do you?'

中学校で習う付加疑問文では、

You fill up your own car yourself, don't you?
You don't fill up your own car yourself, do you?

のように前後で肯定と否定が逆になっていますが、
ここではどちらも肯定になっています。このような付加疑問文('same way' question tags)も実際にはよくあり、『Practical English Usage』では、



「興味、驚き、心配などのリアクションを表すのに使われる (p. 472)」と説明されています。


'Here, Wayne, you fill up your own car yourself, do you?'

「ウェインじゃないか。君は自らガソリンを入れるのか!?」



Like anyone else is going to do it.

この like は as if の意味です。

直訳すると「まるで誰か他の人が私の車にガソリンを入れてくれるかのようだ」となるこの文は、「誰か他の人が私の車にガソリンを入れてくれるわけはない(だから、当然、私が自分でやるに決まっている)」という意味になります。



イギリスのサッカー選手ウェイン・ルーニーがプレミアリーグでの10年を振り返る本『Wayne Rooney: My Decade in the Premier League』から。


Wayne Rooney: My Decade in the Premier League
Wayne Rooney
HarperCollins Publishers
2012-09-01



以下は、「自分はとにかく負けるのが異常なほどに嫌いだ」という文の後に続く文章です。the goals は「試合中に自分が決めたゴール」、United はルーニーが所属するチーム「マンチェスターユナイテッド」のことです。



Unless I walked off the pitch a winner, the goals are pointless. If United lose, I'm not interested in how many I've scored.

Wayne Rooney: My Decade in the Premier League, ペーパーバック版 p. 19




<解説>







Unless I walked off the pitch a winner, the goals are pointless. If United lose, I'm not interested in how many I've scored.

分詞だけでなく名詞も分詞構文として働くことができ、a winner はこの用法です。off はここでは前置詞で、from とほぼ同じ意味です。

「勝者としてピッチを去るのでなければ、自分が決めたゴールには意味がない。(自分のチームである)ユナイテッドが負けるなら、(その試合で)自分が何点ゴールを決めたかに興味はない」

If United loses ではなく if United lose となっているのは United が複数扱いになっているからです。イギリス英語では、団体を表す名詞は、たとえ単数形でも、個々の構成員の集合体として考えている場合には複数扱いになります。

how many I've scored で現在完了が使われているのは、試合終了またはその直後の時点に自分を置き、その試合で累計で何点ゴールを決めたかを考えているからです。




アメリカのスパイコメディ『チャック』から。


CHUCK / チャック 〈ファースト・シーズン〉コンプリート・ボックス [DVD]
ライアン・マクパートリン
ワーナー・ホーム・ビデオ
2011-04-27



主人公 Chuck は家電量販店で働く普通の男性だったのが、ひょんなことからCIAの捜査に協力することになります。

Chuck の大学時代の親友で、謎の死を遂げた Bryce は、大学時代に、CIAのある人物と秘密のやり取りをしていました。このことを突き止めた Chuck は、Bryce がどうやってその人物と連絡を取っていたのかを知ろうとします。以下は、ふと思い出したことを、味方である Casey に伝える Chuck のセリフです。

stash O は「Oを隠す」。



Bryce had a place where he would stash stuff.

Chuck, Season 1, Episode 7  (00:20:39)


<解説>







Bryce had a place where he would stash stuff.

would には様々な役割がありますが、この would は「過去の習慣」を表す用法です。

「Bryce は、(秘密の)ものをいつも隠すための場所を用意していた」


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