英語の音いろ

映画、TVドラマ、洋書などの英語を、文法や構文そしてニュアンスの視点から解説します。

2018年10月


再び『英国王のスピーチ』(2010年) から。予告編はこちら





以下は、ヨーク公(のちの英国王ジョージ6世)が、彼のスピーチ矯正師であるローグに、自分の幼少期について語るセリフです。
最初の乳母はヨーク公の兄を気に入っていて、ヨーク公を嫌っていました。その乳母が自分を支配していじめようとしたことについて話しています。



When we were presented to my parents for the daily viewing, she would ... she'd pinch me so that I'd cry and be handed back to her immediately. 

The King's Speech, (00:53:20)


解説>







When we were presented to my parents for the daily viewing, she would ... she'd pinch me so that I'd cry and be handed back to her immediately.

would には様々な役割がありますが、上の she would ... she'd の would は「過去の習慣」を表す用法で「毎回決まって~するのだった」という意味を持ちます

so that S V は「S が V するように」。

「私たちが毎日の面会のために両親の前に差し出されるとき、彼女は決まって私をつねるのだった。そうすれば私が泣いて、私はすぐに彼女のもとに戻されるから」



イギリス映画『英国王のスピーチ』(2010年) から。予告編はこちら





以下は、ヨーク公(のちの英国王ジョージ6世)が、彼のスピーチ矯正師であるローグに言うセリフです。
ローグの息子が作っている模型の飛行機を見て、自分の子供時代を思い出しています。



I always wanted to build models, but my father wouldn't allow it. He collected stamps, so we had to collect stamps. 

The King's Speech, (00:49:29)


解説>







I always wanted to build models, but my father wouldn't allow it. He collected stamps, so we had to collect stamps.

wouldn't には「過去のある時点における拒否の意思」を表す用法があり、上の wouldn't はこの使い方です。

「私はずっと模型を作りたいと思っていたが、父はそれを許そうとしなかった。父は切手を集めていたので、私たちも切手を集めなければならなかった」


この would の使い方は否定文でのみ可能です。肯定文で主節の動詞に would を使って「過去の特定の1つの時点における意思」を表すことはできません。



世界各地のワインの銘柄の中から25ドル以下で買える優れたワインを紹介する Parker's Wine Bargains から。日本でもワインの良し悪しの尺度として用いられることの多い「パーカーポイント」と呼ばれる点数をつけている Robert M. Parker の他、複数のワイン評論家によって書かれています。

日本語版も「ワインの帝王ロバート・パーカーが薦める世界のベスト・バリューワイン」というタイトルで出ています。




以下は、オーストリアのワインを紹介する章の一節で、首都ウィーン周辺の地域を説明したすぐ後に続く文です。



South along the entire length of the Hungarian frontier lies Burgenland [...] , whose climate is influenced by the juxtaposition of hills and the Pannonian Plain, as well as by a single, geographically anomalous, broad and shallow lake, near whose shores are grown most of Austria's important nobly sweet wines.

Parker's Wine Bargains: The World's Best Wine Values Under $25, p. 56



解説>







South along the entire length of the Hungarian frontier lies Burgenland [...] , whose climate is influenced by the juxtaposition of hills and the Pannonian Plain, as well as by a single, geographically anomalous, broad and shallow lake, near whose shores are grown most of Austria's important nobly sweet wines.

主節である先頭部分は M V S の倒置文です(M は副詞的に働く部分です)。

「そしてウィーンの南側、ハンガリーとの国境沿いには Burgenland 州が位置している。Burgenland 州の気候は、丘陵地帯と Pannonian 平原の隣接、そして、地学的には例外的な広くて浅い単体の湖によって影響されている

最後の

near whose shores are grown most of Austria's important nobly sweet wines.

の部分の構造と意味がよく分からない場合は、まず関係代名詞 whose の節がどこから始まるのか、そして are の主語は何なのかを考えてみてください。







near whose shores are grown most of Austria's important nobly sweet wines.

関係代名詞 whose の節は near から始まっています。near は前置詞として、whose shore は前置詞の目的語として働いていて、near whose shores で「その湖の沿岸部では」という意味になります。

この文は「副詞句+be動詞+過去分詞+主語」という、受動態の倒置文で、

most of Austria's important nobly sweet wines

の部分が are の主語になっています。複数存在する受動態の文の倒置パターンの1つです。

その湖の沿岸部では、気品のある甘さのオーストリアワインのうち、主要なもののほとんどが作られている」



再びハーバード大学の歴史学者 Niall Ferguson によるドキュメンタリー Civilization: Is the West History? から。

81KA+QXqrHL._SL1500_Niall Ferguson, Civilization: Is the West History? [DVD]
(イギリスのDVDは、日本国内用の通常のDVDプレイヤーでは再生できません。ご注意ください)

以下は、イギリスの哲学者ジョン・ロックが、1669年に北アメリカにおけるイギリスの植民地のために起草したカロライナ基本憲法についての話です。



[...] Locke envisaged not a democracy here, but an aristocracy - a hierarchical society complete with margraves and barons. All of that the colonists more or less ignored. The thing that caught their eye, though, was Locke's assumption that practically everybody here would end up owning some land [...].

Niall Ferguson, Civilization: Is the West History?, Episode 2  (00:13:34)



解説>







Locke envisaged not a democracy here, but an aristocracy - a hierarchical society complete with margraves and barons. All of that the colonists more or less ignored. The thing that caught their eye, though, was Locke's assumption that practically everybody here would end up owning some land [...].

通常は名詞が2つ続くときには関係代名詞の省略を考えますが、第2文において All of that と the colonists の間に関係代名詞が省略されていると考えると、意味も変である上に、文の動詞がなくなってしまいます。この文は S V O が O S V に倒置されたもので、文頭の All of that が ignored の目的語になっています。

「ロックがここで思い描いていたのは民主主義社会ではなく貴族社会であり、侯爵や男爵まできちんとそろった階級社会だった。階級に関するそのようなロックの構想については、入植者たちはまともに取り合わなかったが、彼らが注目したのは、入植した全員が最終的には多少なりとも土地の所有者になるというロックの構想だった」



ハーバード大学の歴史学者 Niall Ferguson によるドキュメンタリー Civilization: Is the West History? から。


81KA+QXqrHL._SL1500_Niall Ferguson, Civilization: Is the West History? [DVD]
(イギリスのDVDは、日本国内用の通常のDVDプレイヤーでは再生できません。ご注意ください)

以下は、北アメリカ大陸にイギリス人が、南アメリカ大陸にスペイン人が最初にやってきたときの話です。settler は「入植者」、Spaniard は「スペイン人」、Briton は「イギリス人」。



The key question that faced the new settlers in the Americas - Spaniards in the South, Britons in the North - was how to allocate all this new land. Their answers to this question would decide the future leadership of Western civilization. 

Niall Ferguson, Civilization: Is the West History?, Episode 2  (00:12:38)


解説>







The key question that faced the new settlers in the Americas - Spaniards in the South, Britons in the North - was how to allocate all this new land. Their answers to this question would decide the future leadership of Western civilization.

第2文の would は「~することになるのだった」という「過去から見た未来」を表します。従属節の中で would が「過去から見た未来」を表すことはよくありますが、このように、主節の動詞としての would が「過去から見た未来」を表すことはそれほど多くはなく、日常会話ではほとんどありません。主に物語やナレーションなどで見られる用法です。


「アメリカ大陸への最初の入植者(南アメリカ大陸ではスペイン人、北アメリカ大陸ではイギリス人)が直面した最重要課題は、この新しい土地全てをどうやって分配するかということだった。この課題に対するスペイン人とイギリス人の対処のしかたが、この先、南アメリカと北アメリカのどちらが西欧文明の牽引役になるのかを決定することになるのだった」


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