イギリスの文学批評家、文化理論家テリー・イーグルトンによる Hope without Optimism(2015年)から。現代において、現実を見つめながら希望を持つということはどのようなことなのかを考察する本です。


Hope Without Optimism
Terry Eagleton
Yale University Press
2017-06-02



以下は、13世紀のイタリアの神学者トマス・アクィナスが「hope(希望)」というものをどのように定義していたかを、著者であるイーグルトンが説明する文章の1文です。

アクィナスは、希望とは美徳の1種であり、達成が困難な『善』に対してこそ希望を持つべきだと考えていた」という説明の後に、以下の文が続きます。the virtue とはここでは「希望(という美徳)」のことです。the ready-to-hand は「簡単に手に入るもの」。



You cannot hope for the impossible, but neither in Aquinas's view is the virtue best exemplified by the ready-to-hand and easy-to-achieve.

Terry Eagleton, Hope without Optimism, p. 50




<解説>







You cannot hope for the impossible, but 

You は人一般を表します。「the + 形容詞」は「~なもの」。

「達成することが完全に不可能なものに対して希望を持つことはそもそもできないが」


neither (in Aquinas's view) is the virtue best exemplified by the ready-to-hand and easy-to-achieve.

英語では、否定の意味を持つ副詞が先頭に来ると、後ろは疑問文の語順に倒置される、という約束があります。neither(~もまた…ない)が否定の意味を持つため、後ろが疑問文の語順に倒置されています。

the virtue が主語。be best exemplified は、best exemplify O(Oがどんなものなのかを最も適切に示す)の受動態です。

アクィナスの見解では、簡単に手に入ったり達成できたりするものも、『希望』という美徳(の本来あるべき形)を最適には示さない」

つまり

「簡単に手に入ったり達成できたりするものも、『希望』という美徳の対象としてふさわしくないとアクィナスは考えていた